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2011.07.06
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カテゴリ:昭和期・後半男性

  『風の歌を聴け』村上春樹(講談社)

 久しぶりに本書を手に取ったのは、えーっと、遡っていくと去年の出来事あたりがその「遠因」かなと思います。
 内田樹氏の講演会に行ってきたんですね。
 今となってはあまり覚えていないんですが(最近の私の記憶力の低下については、もはやなにをかいわんや状態でありますが)、確か、ノーベル文学賞の発表前後じゃなかったかしら。
 で、テーマが村上春樹であった、と。

 確かその時内田氏は、『ノルウェイの森』にかなり触れていらっしゃった記憶があります。
 あっ、そうだ。『ノルウェイの森』の映画化が話題になっていた頃でした。
 割と面白い分析をなさっていまして、その講演会が切っ掛けで、私はネットで、内田氏の村上春樹に関する本を調べ、そして買ったのが二ヶ月ほど前ですか。

 しかしこうして、一つのテーマについて自らの取った行動を遡ってチェックしてみますと、私ってつくづく動きの鈍い人間だなーって、思います。
 さらに、その動きの鈍さは続いていきます。

 で、そのとき読んだ本が、

  『村上春樹にご用心』内田樹(アルテス)

でありまして、とても楽しかったです。で、この続きの本が出ている、と。
 (思い出しました。去年の内田氏の講演会で、ご本人がこの度続編を出版しますとおっしゃっていました。)
 その続編のタイトルがこれですね。

 『もういちど村上春樹にご用心』内田樹(アルテス)

 この本を買ったのが一ヶ月ほど前。
 しかし、この本は、私としては、前作ほど面白くは思えませんでした。あの講演の時におっしゃっていた『ノルウェイの森』を巡る分析が載っているかなと期待していたのですが、ありませんでした。
 (そういえば、講演の時、この分析は急遽朝から考えていたものです、みたいのことをおっしゃっていたっけなー。)

 とにかく、トータルな印象としては個人的には少し残念なものではありましたが、この本の中に加藤典洋氏の事が触れられてありました。
 加藤氏については、村上春樹作品の初期から説得力ある分析を一貫してされていた方だといった紹介でありました。

 そこでふと私は、そういえば昔に古本屋で見付けて買った『国文学』に、加藤典洋の『風の歌を聴け』についての論文があったよなー、と思い出しまして、それを読んだのが先日。(一応、何回目かの再読ですね。)

 以降、ぱらぱらとではありましたが、斉藤美奈子の『妊娠小説』を一部読み直し、さらに石原千秋の『謎とき村上春樹』も同様に読み直しました。

 思い起こせば、冒頭の村上春樹の小説を初めて読んだのは、私の大学生活後半の頃でした。確か友人に勧められ、借りて読んだと思います。
 あの頃は、いわゆる「元新左翼」っぽい若い作家がいろいろ出てきた頃で、同じような感じの作品が次々に出版されていました。

 だから、(という接続詞が相応しいのか、よく分からないのですが)本作の印象も、それなりに面白くはありましたが、他の同種の小説に比べて「一頭地を抜いて」というほどのものは、私は感じませんでした。

 ただ、違ったのはそれから先。
 二作目三作目と出版され続けていったその作品は(特に圧倒的転換点は三作目『羊をめぐる冒険』ですかね)、他の「弱小」作家のものとは、まるで比較にならない充実ぶりでした。

 いつの間にか、私は自分の『風の歌を聴け』の単行本を買っていました。
 新作の出るのが待ち遠しく、例えば今でも手元には、1980年9月号の『文学界』の雑誌があったりします。
 この雑誌には、後に『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の「世界の終わり」の部分の元となった『街と、その不確かな壁』という少し長めの短編小説が掲載されています。
 たぶんこの作品は、その後、どの単行本にも収録されていなかったはずであります。(じゃなかったかしら。)

 ともあれ私は、よーするに割と早い頃からの「ハルキスト」であったわけですが、多くの「○○イスト」のその時々に温度差があるように、私の場合も、一直線に熱い「ハルキスト」ではありませんでした。
 いえ、それには、私なりに理由はあるのですが……。

 ……なんか、ヘンな私の読書遍歴の話になっていますが、えーっと、そんなつもりはなかったんですがねー。
 えー、次回に続きます。


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Last updated  2011.07.06 07:05:41
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