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analog純文

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2011.11.12
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  『真景累ヶ淵』三遊亭円朝(岩波文庫)

 少し前に同作者の『怪談・牡丹燈籠』を読みまして、とっても面白かったもので、同じく「怪談物」の本作を読んでみました。

 相変わらず見事な言文一致体で、以前にも触れましたが、これだけの先行作品がありながら、なぜ日本の明治初期の言文一致運動はすらすらと進まなかったのかと、私はかなり疑問に思っているんですがー。どなたか、お教えいただけないでしょうかね。

 ただ、少し思うのは、新しい物が産まれる時はいつも同じだと思うのですが、新しい物は新しいというだけで優れた価値でありながら、同時に新しい故に重みに欠けてしまう(という風に往々にして思われてしまう)というところがあるからでしょうか。

 たとえば、言文一致運動とは関係ないですが『月に吠える』で口語詩の地平を一気に圧倒的に拡げた萩原朔太郎は、その後文語詩に戻ってしまいましたね。あれは一体なぜなんでしょうね。

    およぐひと

  およぐひとのからだはななめにのびる、
  二本の手はながくそろへてひきのばされる、
  およぐひとの心臓はくらげのやうにすきとほる、
  およぐひとの瞳はつりがねのひびきをききつつ、
  およぐひとのたましひは水のうへの月をみる。


 この口語詩の中に天衣無縫に描かれる詩情は、その滑らかさを信条としつつ、やはり重みにかけるような気が、するといえばしますね。
 純粋にその創作物のできは良くても、生まれたものが時間を背負っていないということは(当たり前で、だって産まれたばかりですから)、否応なしにその評価に強く影響を与えてしまうのかも知れません。

 と、まー、そんなことも考えつつ、しかし、このお話は文句なしに徹底的に面白い物でありまして、本当はあまり、文体がどうのこうのなんてことは考えながら読んだりはしませんでした。

 岩波文庫で460ページほどもあります。とっても長いお話です。長すぎて、真ん中で見事に二つに分かれてしまったお話です。

 以前にも述べたことがありますが、私は落語が好きで、文庫本でも結構読んでいました。
 その中には、やはりお話が途中でブツ切れてしまっているのも少なからずありましたが、これは一体どういう現象なんでしょうかね。昔の人は大まかで、そんなことは気にしなかったからでしょうか。

 でも、明らかにお話は二つに分かれているのですから、きっちりと別々の話に仕立ててしまえばいいと思うのですがね。(本作も、分かれておりながら微妙に登場人物の出入りがあったりしていますが、はっきりいってこれは一作品しているから人物が出入りするのであって、別々の話にしてしまってもさほど困らないと思うのですが。)
 これもよく分からない事柄の、その二であります。

 まず前半が、「怪談話」であります。
 幽霊が出てくるんですね。いえ、幽霊かどうか微妙なものが出てきます。
 「真景=神経」なんですね。文明開化この方、幽霊なんていやしない、気の迷いだ、神経だ、というのが「真景」の言葉の由来だそうです。(でも明治以降でも、「幽霊もの」には大物・泉鏡花がいらっしゃいますよねぇ。)

 しかし以前にも少し触れた、三島由紀夫の『遠野物語』批評の伝で行けば、「炭取り」は明らかに回っているんですね(村上春樹の『羊をめぐる冒険』を書いた本ブログを参考にしていただければありがたいです)。

 で、この「幽霊」の出し方が、実に絶品です。
 この瞬間のこの出し方しかないというところで、見事にぴたりと幽霊を登場させています。それは語り(文体)とストーリーが渾然一体となった、まさに名人芸であります。

 と言うところでお話は終わっても良かったんですが、触れましたようにさらに後半が始まります。
 後半は、「幽霊」は出てきません。かわりに語られるのが「仇討ち話」であります。

 そもそもこのお話には、前半もそうですが、見事にたくさん小悪党が登場しますね。読んでいてめちゃめちゃうっとうしい奴らです。
 しかしこんな小悪党は、実際この時代に(江戸時代後半でしょうか)結構いたのですかね。
 文化文政期から幕末にかけての、歌舞伎やなんかの爛れたようなデカダンス文芸なんかを見ていますと、こんな少々力のある小悪党が(武家階級とかヤクザとかですね)、弱者をいたぶる話はいっぱいあったような気がします。

 そう言えば昔テレビで流行った「必殺シリーズ」。
 『必殺仕掛人』や『必殺仕置人』なんかの世界は、まさにそんな世界でしたね。弱者が一杯の恨みを呑んで死んでいったその恨みを晴らす、というのがテーマでしたね。懐かしーなー。

 本書の後半もそんな話であります。
 しかしもう、こんな話になっちゃいますと、あれこれ理屈など言わず純粋にストーリーを楽しんでいき、最後の大円団でスカーーッとカタルシスを感じる、でいいのだと思います。
 事実そんなお話でした。
 上記二つの疑問は残ってしまいましたが、そんなとっても面白いお話でした。


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Last updated  2011.11.12 10:32:31
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