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近代日本文学史メジャーのマイナー

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analog純文

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2011.12.07
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  『箱男』安部公房(新潮文庫)

 親戚に小学校の教員をしている若い者がいまして、時々、一杯やりながら小学校教育現場の話を聞いたりします。

 今の時代ですから、何かと「生臭い」話も出てくるのですが、家でリラックスしている時にそんな「うっとうしい」話は聞きたくないので、さりげなく私の一応「テリトリー」である文学、小学校ですから児童文学ですかね、いわゆる国語の教科書に載っている文学教材の話の方に持っていこうとします。

 というのは、かつて私の子供達が小学生だった頃、小学校の国語の教科書を時々ぱらぱらと見ていたのですが、なかなか文学教材が充実しているという印象を持ったからであります。(本当はもうあまり覚えていないのですが、なんか、反戦教材も結構充実していたような印象があります。)

 (少し話は飛びますが、きっとその親戚の若い小学校の先生だけじゃないと思うのですが、全般に、学校の先生って、思ったよりずっと文学関係の本って、読んでいないような気がします。まー、忙しいんでしょうけれど、私としては少し淋しいですね。)

 ところが先日ふと、文学教材、それも「純文学」の本道のような作品の話になりました。小学校の国語の教材で、「純文学」の本道みたいな作品って、なんだと思います?
 ふふ、分からないでしょう。
 しかし、聞けば、あっと思ってそして思い出すと思います。(これ、ヘンな文ですね。)
 この作品です。

   『やまなし』宮沢賢治

 ……うーん、なるほどねー、と思ったでしょう。そうなんですねー。
 親戚の若い先生の話によると、この作品は極めて得意な教材だそうです。どう特異かというと、こんなにも特異です。

 「教師にとってはめちゃめちゃ教えにくく、生徒にとってはめちゃめちゃ理解しにくく、しかも、誰もの心の中にいつまでもずっと残っていく教材」

 ……うーん、重ねてなるほどねー。
 実は私、この話の後で、この『やまなし』について、職場の方に聞いたんですね。もーかなり年輩の女性の方です。するとそこに、比較的若い女性もやってきて、こんな話になりました。

 「あ、それ、覚えてます。私も小学校で習いました。」
 「私も習いましたよ。」
 「えーっと、『モランボンは笑ったよ。モランボンは死んだよ』とかいうのでしょ。」
 「そー、『モランボンはぐふぐふ笑ったよ』とかいうやつ。」
 「そー、そー。」
 「……モランボン?」
 「……モランボンって、それ、違うんじゃない? それって何か、焼き肉系の名前じゃない?」
 「……。」

 なるほど、誰もの心にいつまでも残っている作品ですよねー。

 『クラムボンはわらったよ。』
 『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
 『クラムボンは跳てわらったよ。』
 『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』


 これが正解ですが、うーん、さすがにインパクトのあるフレーズですよねー、本当。

 さて、冒頭の読書報告の話にいっこうに進んで行かないのですが(こんな流れの時は、大概「次回に続く」になるんですが、後に書きますように、次回にどうも続きようがありません)、『箱男』と『やまなし』の共通項に何があるかと言えば、時系列順に書くとこうなります。

 『箱男』読了→「完全犯罪」の感想→宮沢賢治『やまなし』の連想

 と、まー、こんな具合なんですが、この『箱男』も、どうも手も足も出ないと言う感じでありましてー。
 実はこの本は私、確か3度読んだと思うんですが、今回が一番手も足も出ない、「完全犯罪」という印象を持ってしまったんですね。
 で、同じく「完全犯罪」っぽい『やまなし』を思い浮かべた、というわけであります。

 あるいはもうちょっと頑張ったら、もう少し手がかりが出てくるとは思うんですが、なぜかあまり気が進みません。と同時に、太宰治の『お伽草紙』の中の、「桃太郎」に関して述べたフレーズを思い出しました。

 それは確か、「もうこの作品はこの形でぎりぎりの純粋性を誇っているのだ。これは日本人に昔から歌い継がれた日本の詩である。」というニュアンスの文だったと思います。

 うーん、あんまり関係ないですかね。
 今回は、あっち行ったりこっち行ったりの、まったくまとまりのない報告になってしまいましたなー。(でも、毎回こんなんですかねー。)

 しかし、『箱男』以降、『密会』『方舟さくら丸』『カンガルー・ノート』と繋がっていく、見ていてはらはらするような筆者の苦闘の跡は、やはり間違いなくこの作品から始まるのだと、わたくしは思うのではありますが。
 (それはあたかも、「完黙」してしまったサリンジャーのごとく。……)


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Last updated  2011.12.07 06:21:29
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