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2012.05.13
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  『武蔵野夫人』大岡昇平(新潮文庫)

 「恥の多い人生を送って来ました」と書いたのは太宰治ですが、わたくしも振り返って見ますれば、「恥」はもちろん今に至るもとても多く、そしておそらくこれからも恥だらけの人生であろうとは想像できますが、その恥にも増して、たいがい「ムダ」の多い人生でもありました。

 それは趣味的なもの、そもそもわたくしは熱しやすく冷めやすくという性格でありまして、いろんなものに一時期凝って、しかし極めるところまでは行かず、ものにならずと、……まーしかし、それはきっと私だけでもないだろうとは思うんですがね。でしょ。
 とにかくいろんなものに散財をし(「散財」だなんて、そんな大層なことは本当は臆病者ですからできもせず、ちょっとお小遣いを傾注した程度のことなんですけれどもね)、そして今となっは、何も残らない、と。いえ、「ムダ」だけが残った、と。

 そんなものならずのだらしない趣味もさることながら、今回私がちょっと思っているのは別のことで、それはものにならなかった学問のことであります。
 まーこれは、まだこれから先のことは分からないとも思いつつ、しかしこの年になって改めて勉学に励むというのはなかなかパワーのいることで、世間には停年退職後大学に再入学する方も今の時代けっこういらっしゃるものの(私の知人にもいらっしゃいますが)、でもちょっと大変そうであります。

 そんなわけで、取りあえず「今のところ」というエクスキューズを一応付けて、ものにならなかった学問に、大学の第二外国語があります。
 しかしこれも、ほとんどの方について同様でありましょう。
 先日、外交官の方のお話を聞く機会があったのですが、その方は英語とロシア語は話されるものの、大学で学んだ第二外国語のフランス語はものになっていないとおっしゃいました。なるほどねー。

 とにかく、今出ました「フランス語」であります。
 全く何の役にも立っていませんねー、私の場合。
 大学時代、最初のフランス語の授業の時に、先生が、「あなた達のほとんどは、大学の必修単位として無理矢理フランス語を学ばせられるというのが実際の所だと思います。実にお気の毒と思いますが、せっかくですから、一つだけ学んだらいかがでしょうか。」というニュアンスのことをおっしゃったのを憶えています。

 そして一つだけ憶えておきなさいとおっしゃったのは、フランス語の読み方のことで、これは英語に比べて法則性が高く、基本的な発音方法さえ最初に憶えたら、後は意味は分からないでもとにかく読める、という事でありました。

 私は、先生のそのご意見に何となく納得しまして、なるほど読めるようにだけはなろうと、本当に「最低限」の努力はしたんですがね、そして一時は、その通りに取りあえずフランス語の文を読める(発音できる)と言うところまで行ったはずなのに、……はずなのに、ああ、はずなのにぃ……、今となっては忘却の彼方であります。
 「ムダ」ですなぁ。
 
 ところで、そもそもなぜ私が、第二外国語にフランス語を取ったかといいますと、これは打てば響くように言えますね。
 芸術の国フランス、文学の都パリ、と、とってもミーハーな文学青年だった私は考えていたからであります。

 だって高校3年生の頃私が読んでいた小説家、例えば大江健三郎ならサルトルでしょ、倉橋由美子はフランスのヌーボロマン、三島由紀夫はフランス心理主義小説と、当時、現代日本文学のはやりの「店舗」は、ことごとくフランスが「元祖・本家」という感じであったように思います。

 その中でも、三島由紀夫が影響を受けたフランス心理主義小説、恥ずかしながら私も、頑張って読みました。(もちろん、ものにならなかったフランス語ではなく、翻訳で。)
 『クレーヴの奥方』『マノン・レスコー』『危険な関係』『アドルフ』そしてスタンダール、など。
 面白かった記憶はあるんですがねー。というより、なるほどこんな書き方が小説の本道なんだなと感心した覚えがあるんですがねー。
 今となってはやはり、忘却の彼方であります。

 えー、なかなか、冒頭の小説につがっていきませんねー。
 毎度の事ながら、とっても申し訳ない思いであります。(本気で反省せーよ。)
 というわけで、申し訳ないながら、次回に続きます。どーも、すみません。


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Last updated  2012.05.13 15:05:39
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