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analog純文

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2012.06.14
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  『犀星王朝小品集』室生犀星(岩波文庫)

 いつのブログ内容でしたか、室生犀星を巡るエピソードに、こんな話を書きました。
 自分の体験談を小説そのまま書くとやや問題がありそうだ、と相談する後輩に対して、犀星がこんなアドバイスをしたというんですね。

 「そんなの簡単なことだ。『ある大納言がいた。』と書き出せばいい。」

 とっても面白い、かついかにも犀星らしい「大胆不敵」な感じのするエピソードだなと、思っていました。
 そしてこのエピソードを、私は一体どこから「仕入れ」てきたのか、長く失念していたのですが、本書の解説の中村真一郎の文章の中にありました。
 ということは、かつてこの解説だけは私は読んでいたわけであります。本文の小説は、初めて読みました。そしてとっても、面白かったです。

 犀星の小説は、何作かは読みましたが、さほど沢山は読んでいません。
 その理由の一つは単純で、さほど沢山文庫本になっていないからですね。
 じゃなぜ、さほど沢山文庫本になっていないかと考えますと、これはなかなか奥行きのある話になりそうな気がします。

 と、書きましたが、でも実際の所、幾つかの仮説が浮かびつつその仮説が正しいのか検証のしようがなく、思いつきのようなものになってしまいますが、ちょっとだけ書いてみますね。

  ふるさとは遠きにありて思ふもの
  そして悲しくうたふもの


 これは言うまでもなく、犀星作の『小景異情』一節ですが、日本近代詩歌の中ではとても人口に膾炙された詩の一節ではないかと思います。
 日本近代詩の中にも、幾つかの広く人口に膾炙された詩はあるでしょうが(古いところでは島崎藤村あたりから)、この詩の一節は、私の中では、佐藤春夫の『秋刀魚の歌』と並んで、とっても有名な詩であると思っています。

 ついでの話ですが、かつてはこういった「まとも」な文学者(詩人)の詩の一節が、広く国民に知られた時代があったんですよね。
 それに比べて現代は、と言ったところでどうしようもないのは分かっていますが、しかしあまりに現代詩は、『小景異情』の頃の享受のされ方と異なりすぎているような気がします。
 そんなことないですかね。なぜそうなっちゃったんでしょうね。どうしようもないんでしょうかね。

 たぶん現代詩は、詩からポピュラリティという要素をことごとく排除してしまったからだと思いますが、じゃあ、なぜそんな風にしなければならなかったのか、……うーん、私にはよく分かりません。
 一度、友人の現代詩人のIさんに聞いてみたいと思います。

 さて閑話休題しまして、何が言いたかったかと言いますと、室生犀星は純文学畑の人としては、一応の有名人だったということであります。
 ただ、それは詩人としてであって、小説家としてではなかった、ということでもありました。それに、小説がある「流派」の中に入りきらなかったのも、広く読者を持ち得なかった(もう少し厳密に言えば、「長く」読者を持ち得なかった)原因として、大きいかなと思います。

 「流派」なんてレッテルは、一人の作家をデビューから死迄ずっと追いかけていけば、ほとんど意味のないものであることはすぐに気が付くのですが、いかんせん、レッテルは便利です。

 忙しい現代社会の中で、逆に、先人がレッテルを貼らなかった存在というものは、現代ではほぼ「無用」だと言ってよいという欲求が、きっといっぱいあるのでしょうね。
 だって本屋に行けば、『これ一冊で分かる○○』とか『何分で理解できる××』なんて本が溢れているではありませんか。

 犀星は、そんなジャンル分けの中に入りきらない作家でした。
 そして本来ならば、そのことは作家として一番の「勲章」になるはずのものでした。
 なぜなら、犀星がジャンル分けされなかったおそらく一番の原因は、他から突出して際だつ「独創性」ゆえであったからです。

 いえ、類似する独創性を持った作家が、全くいなかったわけではないと思います。
 しかし、それらの作家達の共通する独創性の方向とは、たぶん「知的なものの極北」ということで、それゆえ、高いオリジナリティと共に、たぶん彼等は文学史の「流派」の枠組みから外されてしまったのだと思います。

 次回、もう少し作品に即して、考えてみたいと思います。


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Last updated  2012.06.14 06:17:53
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