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2013.03.24
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カテゴリ:昭和期・中間小説

  『砂の器・上下』松本清張(新潮文庫)

 どうしてですかね、推理小説を読む時に限って、妙に「リアリティ」なんて事を考えるんですが……、そんなこと、ありませんかね。

 もちろんそれは、推理小説に殺人とかの、いわば「非日常的」な出来事が起こるからでありますね。
 つまり、フツーの人にとって身辺に殺人事件が起こるなんて事は、一生の内にほとんどないという前提の元、しかしそれが小説内のフツーの登場人物(もちろんフツーじゃない登場人物の場合もありましょうが)には起こってしまうから、そういった展開に、はたして我々が感情移入しうるリアリティはあるのかと考える、と。

 まー、その当たりが正解なのかなとは思いつつ、じゃ、さらに、小説を読むにあたってそんな「リアリティ」とは具体的にどんなものなのかと考えると、それは結構、簡単な話ではありません。

 これは以前にも書いた気もするのですが、重複することを恐れずかつ簡単にまとめますと、「我々は自分を心地よく騙してくれる程度のリアリティをこそ求めている」ということでありましょうか。
 実はそんなにガチガチにリアリティを求めているわけではないんですね。
 だって、そんなガチガチのリアリティを必要とするなら、我々は小説なんて読まずにドキュメント、ノンフィクションを読めば、それで話はすむのであります。

 即物的な例でありますが、一小学生である江戸川コナン君は(言わずと知れた青山剛昌氏の漫画『名探偵コナン』の主人公ですね)、どうしてあんなに殺人事件に遭遇するのか。
 でも、まぁ、私たちは、その辺はご愛敬として、コナン君の事件簿を楽しく読みますわね。結局我々の求めるリアリティとはそういうことであります。

 さて、そんなリアリティを求めて、今回の本書の事を報告するわけであります。
 というところで、やっと一周回って冒頭の一文に戻ってきたのですが、……うーん、何といいますか、やはり少し、違和感が残るんですよねー。

 それはひとつには、本作の展開において、リアリティ上の違和感は結構たくさん感じるということがあります。
 例えば、前半に出て来る「紙吹雪の女」や「カメダの不審者」の行為や存在にはほとんどリアリティがないんじゃないかとか、主人公の老刑事の謎解きのプロセスは、あまりに彼の身辺で都合良く展開しすぎてはいないかとか、あんな「殺人凶器」はありなのかとか、まー、あれこれ引っかかっていけば、どんどん引っかかってしまうんですね。

 ところがそんな「リアリティ」に関する瑕疵を列挙し、さてそれでどうなんだと、ふと思った時、私は冒頭の違和感にぶち当たったわけです。つまりそれは、我々は推理小説にだけ過度にリアリティを求めてはいないか、と言うことであります。

 例えば志賀直哉の『和解』の中に、妻に対して残酷なばかりの対応をする主人公が出てきますが、そんな個所を読む時、我々はまず場面の「リアリティ」を考えるでしょうか。
 わたくしならまず、主人公の性格設定という言葉がたぶん浮かびます。そのように筆者によって作られた性格なのだという風に考えて、それでなんとか自らを納得しようとするんですね。

 それでもまだ納得できない時、次は「自分にはよく分からないが……」と重要部分をペンディングしてしまって話を進めそうな気がするんですが、こういう感じ方って、おかしいですかね。一般的ではないですかね。

 そんな風に考えますと、純文学には作品評価の基準にリアリティは無いということになってしまいますね。(これはいくらなんでも純文学に甘すぎる気は、かなりします。)なのに、推理小説の時だけキツイのは不公平なんじゃないか、と。

 さて、結局の所、私は本作品をどう感じたのかというと、一番急所となるべき殺人動機部分にも、少々リアリティの破綻が見えると感じたということでありましょうか。
 少なくとも、犯人があそこまでの遺体損傷を意図する(血だらけの遺体の顔面を電車に轢かせようとする)のは、人間心理の捉え方にかなり無理がありはしないかと思ったのでした。

 ただ、本作は新聞連載小説です。制作サイドとして、顧客に対するサービスは、当然案じてしかるべきものであります。次回、次々回に、読者の興味をつないでいかねばなりません。
 そんな新聞小説に、推理小説がはたして相応しいのかどうかは私の手に余る問題ではありますが、例えば漱石の『こころ』などを思い出してみますと、なるほど描き方次第で「二兔を追う」ことは十分可能であるなと感じます。
 
 本作品もとても有名な小説ではありますが、一方で筆者松本清張には、もっと完成度の高い作品もあると聞きます。もとより私は、この一作で筆者のトータルな評価をしようと言う気はさらさら無いのでありますが。


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Last updated  2013.03.24 12:52:08
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