【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

近代日本文学史メジャーのマイナー

近代日本文学史メジャーのマイナー

Calendar

Archives

Recent Posts

Freepage List

Category

Profile

analog純文

analog純文

全て | カテゴリ未分類 | 明治期・反自然漱石 | 大正期・白樺派 | 明治期・写実主義 | 昭和期・歴史小説 | 平成期・平成期作家 | 昭和期・後半男性 | 昭和期・一次戦後派 | 昭和期・三十年男性 | 昭和期・プロ文学 | 大正期・私小説 | 明治期・耽美主義 | 明治期・明治末期 | 昭和期・内向の世代 | 昭和期・昭和十年代 | 明治期・浪漫主義 | 昭和期・第三の新人 | 大正期・大正期全般 | 昭和期・新感覚派 | 昭和~・評論家 | 昭和期・新戯作派 | 昭和期・二次戦後派 | 昭和期・三十年女性 | 昭和期・後半女性 | 昭和期・中間小説 | 昭和期・新興芸術派 | 昭和期・新心理主義 | 明治期・自然主義 | 昭和期・転向文学 | 昭和期・他の芸術派 | 明治~・詩歌俳人 | 明治期・反自然鴎外 | 明治~・劇作家 | 大正期・新現実主義 | 明治期・開化過渡期 | 令和期・令和期作家
2013.05.12
XML
カテゴリ:昭和期・後半男性

  『官能小説家』高橋源一郎(朝日文庫)

 冒頭の長編小説の読書報告の後半であります。
 前回は、ワーグナーとブラームスは結局ベートーヴェンでもあり夏目漱石と森鴎外でもあるが半井桃水と高橋源一郎はとっても小林秀雄っぽい、ということでありました。たぶん。

 ところで本小説は、わたくし、再読であります。
 だいぶ昔に一度読みました。その時の私の読書メモにこんな風に書いてあります。

 「前半はひどかった。中盤はさすがに読ませた。終盤は又すかすかしてきた。全体としてはまあまあかな。」

 かなりわがままな感想ではありますが(どうもすみません)、本書再読後に改めてみてみると、今回の読後感想もほぼその通りではないかと、少々厚かましくもそう思ったのでありました。

 まず、前半はひどかったという感想ですが、かつての私がそう感じたのは、たぶんこんな所だと思います。

 後は「億万長者と結婚する方法」だ。藤原紀香の脚は、この世で見る価値のある数少ないものの一つじゃないだろうか。まあ、あくまで脚に限るけど。それから、「ナースのお仕事3」。もちろん、観月ありさの脚が出てくるところが素晴らしい。それに神田うのに松下由樹か。あんな看護婦ばかりいる病院がほんとにあるだろうか?

 ……うーん、この意味ですが、……うーむ、後で、考えてみますね。

 次の、中盤はさすがに読ませたというかつての私の感想ですが、これは、ある意味高橋源一郎の小説の読ませどころですね。
 半井桃水と樋口一葉のラブストーリーを書いた部分ですが、実は筆者の小説はポップな衣装を纏ってはいますが、その中に描かれる感情は「透明感のある切なさ」というような言葉でまとめることのできる、かなり広くポピュラリティのあるものです。

 しかしもしも、この「透明感のある切なさ」という感情の描写やテーマが、少し感傷的でありはしないか、通俗的でありすぎはしないか、あるいは芸術性に欠けるのではないかという不安を、筆者自身が持ったとしたら……。
 
 さて、この度私が本書を再読して気が付いたのはそのことであります。
 そして、前半のマゾヒステックなまでの物語の壊しぶりや、終盤の「すかすか」の原因こそこれではないのか、と私は思ったのでありました。

 作品の最後のあたりに、鴎外の思いとしてこんな事が書かれています。

 だが、結局のところ、鴎外は一度も満足したことはなかった。
 ある作品は毀誉褒貶に晒され、ある作品は無視された。また、格別の評判を得る作品もあった。その度に、喜び、哀しみ、また無知や無理解に怒りを感じたこともあった。やがて、鴎外はほとんどなにも感じなくなった。人々あるいは世間というものの評価に興味をなくした。
 それではいけない。何度もそう思った。この世界から切り離されたところで自分のためにだけ書く「芸術家」だけにはなるまいと心に決めていたからだ。だから、冷えきった心に鞭打ち、乏しい残り火をかきたてるようにして新しい作品に立ち向かってきた。
 しかし、それはいったいなんのためだったのだろう。


 前回のこの欄に私は、筆者がとても真面目に書いている(真面目に不真面目に書いている)ということに触れましたが、そもそもこんな小説家小説を書くというのがきわめて「本気」でありますよね。
 そしてまさに「冷えきった心に鞭打ち、乏しい残り火をかきたてるように」書いたのが、この悪ふざけのように見える「物語の解体」の部分であったのかもしれません。

 そういえば、筆者はデビュー当時、もっともっとわがままに小説を書いていたような気がします。もっと「無意味」のそばで遊んでいたように思いました。

 それに比べれば(本作においてだけなのかもしれませんが)、本作はかつて筆者の自家薬籠中にあった「無意味」の対極に位置するようなお話になっていると、この度私は思ったのでありました。
 なるほど、生きている作家とは、やはり大変なものですね。


 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓

 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2013.05.12 16:31:46
コメント(0) | コメントを書く
[昭和期・後半男性] カテゴリの最新記事


PR

Favorite Blog

アンダース・エンブ… New! シマクマ君さん

やっぱり読書 おい… ばあチャルさん

Comments

analog純文@ Re[1]:父親という苦悩(06/04)  七詩さん、コメントありがとうございま…
七詩@ Re:父親という苦悩(06/04) 親子二代の小説家父子というのは思いつき…
analog純文@ Re:方丈記にあまり触れない方丈記(03/03)  おや、今猿人さん、ご無沙汰しています…
今猿人@ Re:方丈記にあまり触れない方丈記(03/03) この件は、私よく覚えておりますよ。何故…

© Rakuten Group, Inc.