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2014.07.14
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  『終の住処』磯崎憲一郎(新潮文庫)

 うちの家のそば、……では決してないんですが、一年に2、3度行く美術館があります。なんですか聞くところによりますと、美術館というところは持っている美術品にかなり個性(=片寄り)があるそうですね。

 なるほどそういわれてみると「ボストン美術館蔵浮世絵展」(なんかこんな感じの展覧会がかつてあったよーに思うんですがー)とか「エルミタージュ美術館蔵なんちゃらかんちゃら展」とか、まー、やはり美術館に得意分野があるんですね。

 で、うちの家のそばではないその美術館は、若手の抽象画の現代美術作家が得意と、誰かに教わったよーな気がします。
 ところで、現代美術で、抽象画で、若手とくれば、これはもぅ、最強の「やったモン勝ち芸術」の世界ではありませんか。

 「やったモン勝ち芸術」というのは、私が作った言葉でありますが(多分そうだと思うんですが)、よーするに最初にそのアートっちゅうか、イベントっちゅーか、パフォーマンスをした人については、「おもろいことしよんな」といった評価はできても、二人目とか、せいぜいマイナーチェンジ程度のヴァリエィション作品では、もう誰も感心しないと言う、そんな芸術のことを指しているつもりなんですね。

 もちろん、そんな芸術のどこが悪いんだと言われれば、なるほど、そんなんもありかなとは思います。ただそんなのばかりだと、少し心細い気が、まー、わたくしとしては、やっぱりするんですね。
 ちょっと古臭い言い方になりますが、もう少し技術や理性に裏打ちされた重心の低い美術作品であって欲しい、という感じでしょうか。

 しかし「やったモン勝ち芸術」にしても、確かに初めて見た時は「ハッ」とか「ドキッ」とか「オッ」とかしますね。
 「なんかオモロイやつが出てきよったなぁ」という関西弁的感興を催します。少しわくわくなんてしたりします。なかなかこれも、いいモンです。

 で、さて、冒頭の小説です。
 文庫本で80ページほどの作品であります。少々短めの中編。2009年の芥川賞受賞作品だそうであります。なるほど芥川賞ねらいの分量。
 で、さて、わたくしこの度、何にも予備知識を持たないで本作を読んだのですが、いやー、斬新でありましたねー。思わず笑ってしまうほどに、新しい!

 こういう新しさって、ちょっと他に例がない様に思います。
 近い感覚で言えば、きっとシュールリアリズムでしょうが、これもちょっと違いますね。シュールレアリズムの、あの無機質感がありません。うん、違います。
 どこがどう新しいのかとさらに考えると、最初に気が付くのはやはり文体でしょうか。
 でも文体というのは、結局ものの見方・解釈のことでしょうから、ここが斬新だと言うことはつまり、作品そのものが斬新だと言うことですね。

 展開もまた、斬新です。
 始めは夫婦の感情のあり方のすれ違いというか、不可能性を描いた、まぁ面白くないこともないが類例は多いという展開かなと思ったのですが、中盤からこれまた実に「ヘン」な展開をしていくんですねー。

 ということは、文体が斬新で、展開が斬新なら、それは十分「新しい文学」と言い切っていいんじゃないか、と。
 ……んー、ただひとつ、わたくしが気になるのは、この作品は(この作家は)、一体何を目指している(あるいは「目指す」という表現とは少し違うかもしれませんが)のだろうかと言うことであります。

 もちろん、必ず何かを目指していなければならないということはない、ともいえます。
 かつて三島由紀夫は、小説のあるべき姿を、動物園でごろりと寝そべっているアザラシに喩えたことがありました。
 そうであるなら、本作も(本作家も)、なんら「問題」はありません。

 しかしその比喩は面白いとしても、本当に理想の小説のたたずまいが「アザラシ」であるのかどうかについては、やはり議論のあるところでありましょう。

 というわけで、本作は「アザラシ」的新しさと魅力に満ちたスリリングな作品であります。
 と同時に、もう少し、同作家の他の作品を見ておきたいと感じさせる作品でもあります。
 でもそんな作品のことを、実は「お薦め」というのは、たぶん間違いありません。


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Last updated  2014.07.14 18:12:38
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