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2015.06.28
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カテゴリ:昭和~・評論家

  『明治・大正・昭和』中村光夫(新潮選書)

 近代日本文学史のことで、以前から気になっていたことがあります。

 ……と、書けば、なんだか真面目な学究肌の方の文章みたいでかっこいいのですが、なあに、気まぐれにふっと思っただけで学問性や持続性など、薬にしたくてもない疑問であります。

 いえ、それが何かといいますと、三遊亭圓朝の作品のことであります。
 岩波文庫に三作品が収録されてあり、絶版になることもなく現在に至っているのですが(と思うんですが間違っていませんかね)、きっとそれなりの売れ行きを示している理由は、読めばすぐにわかります。
 
 とっても面白くとっても読みやすいからであります。
 そして本作品が、明治の二十年頃に出版されていることを知ると、この見事にオーバードライブした言文一致文体に改めて驚嘆すると同時に、たしか日本文学史の授業で習った「近代初めの言文一致運動」との関係について、迷宮に入ったような戸惑いと混乱を覚えます。

 えっ? 言文一致運動って、もうここに十分言文一致しているじゃない? これ以上にいったい何を一致するの? どゆこと? ……。

 そんな疑問を、わたくし、たまーにふっと、かつぼうっと思い出したりして、でもそれ以上に学問的に深めることもなく怠惰な日々を送ってきたのですが、本書に書いてありましたよ、その真実が。

 ちょうどそのころ、西洋風の速記術が移入され、人情噺の名人と言われた三遊亭圓朝の話が、速記にとって刊行されました。
 二葉亭の談話によりますと、彼が『浮雲』を書くとき、逍遥は圓朝の速記をお手本にしろと勧めたそうです。圓朝の人情噺の速記は今日からよんでも立派な文学ですが、当時の人々は、おそらく面白がってよんでも、これを文章と思わなかったのでしょう。


 ……なるほどねぇ。
 最後の一文に典型的に描かれていますが、当時と現代の、文章というものに対する根本的な認識の違いが、その水面下にあったことがよくわかります。

 それは例えば、現代文学の大きな課題が漫画に描かれていたとしても(現代はジャンルごとの垣根の取っ払いがかなり進んでいると考えても)、おそらくそれは別の物だと、多くの人が考えるだろうことと同じなわけですね。

 ……と、言うようなことが、数多く書かれてある本であります。
 タイトルだけを見ると、内容が文学史の事柄かどうか直接分からなくなっていますが、文学という営みが、当然筆者の生きた時代のすべての環境と共にあることは、今さら言うまでもないことで、明治・大正・昭和の日本社会が、まさにそれぞれの時代の日本文学を生み出したわけです。

 しかし、わたくし今回、本書を読んで、そして、上記に報告しましたような近代日本文学史に関する様々なエピソードを、いかにもどっぷりと首まで浸かるようにして読みながら、中村光夫の文芸評論はとても心地よいと改めて実感しました。

 そもそも己の頭の作りの不手際具合については、常日頃から痛感しておる次第でありまして、それゆえに今まで難しい文芸評論の類は敬遠し続けてきたわたくしでありますが、中村光夫の文章は、そんな私にも砂漠に水がしみ込むようによくわかります。

 ひょっとしたら自分の文章読解力は、己が思っている以上に遥かに進化を成し遂げたのではないかと推察した私は、にわかに本棚より蓮見重彦の『表層批評宣言』の文庫本を取り出してしばらく読んでみたのですが、残念ながらわが推察が誤解であったことを知るにとどまりました。

 ともあれ、様々なシステム的欠陥を持ちながら生まれ、様々に転換点を乗り越えて育った明治・大正・昭和の近代日本文学について、筆者の水際立った鳥瞰的な考察を、私は読み進めていきました。
 それはあたかも体の芯まで心地よい天下の名泉の如くであり、そしてそのような教えを得る機会は、実はきわめて貴重なものでもあり、わたくしは文学史にどっぷりとつかる快楽を、ほとんどいいのいいのとってもきもちいいのと声を挙げんばかりにして感じていたのでありました。


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Last updated  2015.06.28 10:17:41
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