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2015.12.07
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『浄土』町田康(講談社文庫)

 読み終えて、直ちにいろいろ考えるんですね。
 でも読み終えて直ちにいろいろ考えるのは、まー、あまりよくない兆候であります。
 それは内容の意味を探っているからです。ということは内容の意味が分かっていないということであります。
 しかし、意味を探っても、そんなものははじめっからないという作品が世間にはあることも(それも結構あるということも)、一応は分かっています。

 本作はそんな短編集ですが、7つはいっている短編小説の通奏低音めいたものは、この筆者の一種の自家薬篭中のものといえそうな「極端な描写の追及」ですかね。
 例えば、『どぶさらえ』というタイトルの作品の、タイトルそのままの部分ですがこんな感じ…。

 (略)最終的には堆積したヘドロをスコップですくって除去しなければならないが、同時にこのゴミを全部捨てなければならない、とりあえず俺は手近にあった自転車に手をかけて持ち上げて、ひっ、と叫んだ。持ち上げた拍子にハンドルの部分から汚水が垂れて腕を伝って手袋のなかに入ったのである。くわあ、きったなあ、と叫んで手を離したところ、自転車が落下、水が跳ねて今度は目に入ってしまい、咄嗟に手で顔に触れてしまったためぬるっとした汚水が顔面や毛髪に附着、俺は汚辱に耐えかねて絶叫した。

 今、こうして打ってみたのですが、このしつこい描写はなかなか面倒くさい。辛気臭い。
 この短編小説ではこの「どぶさらえ」の場面が、こんな調子で10ページくらいも続くんですね。これはなかなかにいわゆるところの才能がなければ書き続けれるものではない。(という感じの「ら」抜き言葉もこの筆者の文章の特徴の一つなんですが、これも結構雰囲気のある表現になっています。)

 よく似た感覚の作品を思い出そうとしているんですが、やはりスラップスティックな作品が近い感じで浮かび、とすると筒井康隆あたりかなとも思うのですが、さらに筒井作品の中でもっと具体的にどの作品が浮かぶかというと、うーん『乗り越し駅の刑罰』みたいなものかな、と思います。(でも作品のできは、きっと『乗り越し駅の刑罰』のほうがいいです。)

 もう少し別の方向からのよく似た感覚はないかとあれこれ考えてみたら、ふと小川国夫や国木田独歩の短編に、意味とは別の所に価値がありそうなそんな作品があったように思い出しました。どちらも鑑賞のストライクゾーンが極端に狭く、そして透明感のとても高い作品でありました。

 「透明感」と言えばと、さらに思い出し続けてると宮沢賢治の童話『やまなし』なんかも、考えようによっちゃ似てるといえそうだなー、と。でも、『やまなし』まで出てきたらこれは名作になっちゃうじゃないか、と。しかしそれはいすぎだろう。どぶをさらうこの場面のどこに透明感があるのか、と。
 ……うーむ。(見ようによっちゃ本作にも透明感はないとも言い切れない気はしますが……。)

 そもそも、文学以外の芸術作品の場合は(別に芸術作品でなくても同様ですが)、あまり好き嫌いの意味にまで深く考えることはありませんよね。
 例えばお気に入りのコーヒーカップについて、なぜ自分はこのコーヒーカップがお気に入りなのか自らを振り返って考察してみるなんてことは、普通はあまりやりません。
 だいたいが「お気に入り」ってのは、しばしば無意識にそれを選ぶことに後になって気が付いて、あるいは身内や他人に指摘されて、それで自覚するというものでありましょう。

 ところが言語表現のサガとでもいいますか、文章表記によるものは、ついこの作品は何を表しているのかという「意味調べ」をやってしまいます。
 意味などないのだと言い切ってなおかつ納得するというのは、これは実は結構難しいのかもしれませんね。

 仕方がないので、理屈を少し「ゆるめ」て、そして考えてみます。
 浮かんでくるのは2点。文体とイマジネイションであります。
 もう少し具体的に言えば、独創性の高いイメージと、それを保証する正確で美しい(この筆者の場合はカラフルとでもいうべき)文体、となりましょうか。

 なるほどこの二つは、この筆者の作品が高く評価されるときによく触れられる部分ですね。
 でもふと気が付けば、この2点はやはりすべての文学作品の評価基準であるようにも思え、とすればこれは何も言っていないのと同じではないか、いかんいかん、と。

 ……うーん、このタイプの作品を考える(だから考えちゃダメだってのに)のは、なかなか難儀なものであります。いえ単に、少し説得力をつけて作品を褒めたいだけなんですけれど……ねぇ。



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Last updated  2015.12.07 16:25:47
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