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2016.11.03
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  『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』橋本治(新潮社)

 筆者は、何といいますかちょっと変わり種の作家という感じがしますね。
 「変わり種」というのは、本来は小説家としてデビューした方だと思いますが(デビュー作は『桃尻娘』。1977年の小説現代新人賞佳作を受賞し(佳作だったんだ)、その作品が映画化されたりして少し評判になりました)、しかしその後の小説家としてのキャリアはどう展開したのでしょうか。

 わたくしは寡聞にしてよく存じ上げないんですが、思い切って書いてしまいますと、小説家としてさほど順調に力を発揮なさってきたとは(いえ、これはわたくしの誤った認識かもしれませんが)いいづらい気がします。

 でもその一方で、『枕草子』『源氏物語』そして『平家物語』などを換骨奪胎しつつ現代語訳した業績は、きわめて高い評価を得ていると思います。
 私は、『源氏物語』を現代語訳した時の副産物とでも言うのでしょうか、『源氏供養』(中公文庫上下二冊で読みました)という『源氏物語』評論あるいは随筆を読み、とても面白く大いに啓発されました。

 その後も、現代社会の様々な分野の問題事象について積極的に発信をなさっています。つまりマルチタレントな物書きといったスタンスに位置なさっているように思いますが、そもそもとても頭の良い方なんでしょうね。

 さてそんな頭の良い方が、自らの物書きとしての「出身ジャンル」といってもよい「文学ジャンル」において三島由紀夫を取り上げた本です。
 (筆者は、本書は文芸評論ではないと「あとがき」の様なところに書いていますが、その意味がちょっと私には分かりません。あるいは頭の良い人の独特の「こだわり」なんでしょうか。)

 さらに付け加えますと、橋本氏は頭の良い分とても理屈っぽくもあるように思いますが、そんな頭の良い理屈っぽい人が、頭の良さと理屈っぽさについては誰にも引けを取らないと思われる作家三島由紀夫を論じるとどうなるのか。
 想像しただけで何か強烈な(おぞましい)ものが生まれてきそうに思うのですが、例えば、こんな感じ……。

 三島由紀夫は、「完璧なる近代合理主義者」ではない。それを逸脱したものまで容認する、「完璧なる近代知性の持ち主」である。なぜか? 三島由紀夫の作品に登場する女達は、すべて「近代合理主義から逸脱した人物」だからである。それを容認すれば、合理主義は崩れる。しかし、三島由紀夫はそれを容認する。三島由紀夫は、「完璧なる近代合理主義者」ではないのである。三島由紀夫は、近代合理主義の先にある、近代合理主義から逸脱したものまで包括する、完璧なる「近代知性の持ち主」なのである。でもなければ、小説家はやっていられない。小説家とは、合理主義の立場に立って、平気で合理主義から舞い上がってしまう者だからである。だからこそ、三島由紀夫は輪廻転生を容認する。容認して、しかしそれは、喫んでしまった毒だった。輪廻転生を容認して、三島由紀夫は堪えられない。だから、本多繁邦に対して「敗北せよ」とは言えず、本多繁邦と共に敗北してしまう。なんだか不思議である。

 「なんだか不思議」……って、あなたの文自体が「なんだか不思議」なんじゃないんですかい、……と突っ込みながら、……えっと、少し本論から逸れるのですが、こんな文章を読んでいますと、なるほど小林秀雄の文章に飛躍が多すぎると非難されたことの、本当の理由がわかるような気がしますね。

 つまり頭のいい人が、頭の中で辿った道筋を丁寧に誠実に詰めていけば、こんな感じのとっても理屈っぽい文章になってしまうということですね。
 そんなことをきっとめんどくさがる小林秀雄なら、例えば上記の引用部はこんな風に書いちゃうんじゃないでしょうか。

 三島由紀夫は完璧なる近代合理主義者ではないが完璧なる近代知性の持ち主であったと僕たちは思ふ。輪廻転生の容認といふ毒を喫んだ三島が、本多繁邦と共に敗北してしまうとはなんといふ不可思議なことであらう。

 ……ははは、冗談ですがこんな感じ。
 なるほど小林調なら飛躍の多いこともさることながら、とても短くなるのがいいですね。

 さて、閑話休題。
 ……と、閑話ばかりしていたうちにスペースがなくなってしまいました。
 すみませんが、次回に続きます。


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Last updated  2016.11.03 17:24:56
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