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2017.03.13
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カテゴリ:昭和~・評論家

  『漱石とその時代・第二部』江藤淳(新潮選書)

 さて冒頭の漱石評伝「第二部」の読書報告の後編です。
 前回は、漱石の凄さは小説家としての技術の凄さではないかという、(いつもながらの)少し偏った論旨を展開してしまいました。
 でもお分かりと思いますが、私は漱石を批判しているのではなく、私の「フェイヴァレット漱石」の正体を知りたかっただけであります。

 というわけで、後編はもう少し本書の内容に添って考えてみたいと思います。
 私がまとめてみましたこの「第二部」のテーマは、二つではないか、と。

 1.兄嫁「登世」との秘められた恋は、まだまだここからも読める。
 2.ロンドン留学体験に、小説家漱石誕生の鍵が読み取れる。


 まず「1」については、「第一部」でかなり語られていたことですね。「第一部」で語り終わったのかと思ったら、筆者はここでもしつこく書いています。
 もっとも、筆者はこの「不倫」を、漱石の心の奥の通奏低音のように捉えていますから、そして、この部分に本書の批判が集中したところでしたから(私が読んだだけでも何人かの研究者や作家が批判していました。だって、「第一部」では筆者は二人の間には性的な接触もあったとまで踏み込んでいるのですから、まー、批判もされましょうが)、何が何でも持論を更に強固に組み立てていこうとするのは当然といえば当然であります。

 でもそのように導かれて読んでいると、なるほどとかなり納得できそうな気もして、なかなか説得力があって面白いです。

 そして「2」のテーマですが、漱石自身が『文学論』の「序」で、「倫敦に住み暮らした二年はもっとも不愉快の二年なり。余は英国紳士の間にあつて狼群に伍する一匹のむく犬の如く、あはれなる生活を営みたり。」と書いている期間ですから、そして留学終盤には「夏目狂セリ」という電報が同邦者によってロンドンから打たれたほどですから、さぞや強烈な体験であったことは間違いないと思います。

 そんな漱石のロンドン体験を、筆者はたぶんこの2点でまとめています。

 1.漱石の英国文学並びに西洋社会への違和感は、単に英国や
   西洋が対象のものではなくて、日本文化も含むあらゆる社
   会に対する異質性にある。
 2.ロンドン生活における漱石の経済的困窮は、現実的なもの
   として想像以上に漱石の精神世界を蝕んだ。

 まず「1」について、例えば筆者はこんな留学中の日記記述を取り上げています。

 日本人ヲ観テ支那人ト云ハレルト厭ガルハ如何。支那人ハ日本人ヨリモ遙カニ名誉アル国民ナリ。只不幸ニシテ目下不振ノ有様ニ沈淪セルナリ。心アル人ハ日本人ト呼バルルヨリモ支那人と云ハルルヲ名誉トスベキナリ。タトヘ然ラザルニモセヨ日本ハ今迄ドレ程支那人ノ厄介ニナリシカ。少シハ考ヘテ見ルガヨカラウ。西洋人ハヤヤトモスルト御世辞ニ、支那人ハ嫌ダガ日本人ハ好ダト云フ。之ヲ聞キ嬉シガルハ世話ニナツタ隣ノ悪口ヲ面白イト思ツテ自分方ガ景気ガヨイト云フ、御世辞ヲ有難ガル軽薄ナ根性ナリ。

 この例だけからではありませんが、ここにある感情は、漱石が浅薄な近代日本との間に深い溝を感じているがゆえだと筆者は説きます。そして英国社会のみならず、全ての社会に対して「異質性」を感じる漱石の感性の核にあるものは、「第一部」で述べていたどこにも自らの存在の根拠を置けない裸で放り出されていたような捻れた幼児体験にあると繋いでいます。
 さらにそこに「自分の知的・道徳的優越性に対する自負」(これはプライドですね)が重なったのがロンドンでの漱石の姿であり、その先にあったのが「発狂」ではなかったかと述べています。

 さて、上記の「2」については詳しく触れる余白がないのですが、「第一部」からのつながりでいえば、漱石の心に拭いがたい傷を残した幼児体験はロンドンでの生活でその傷を更に膿ませ(その大きな要素が経済的困窮にあり)、漱石を発狂の淵まで連れて行きます。
 彼は帰国後も自らの精神世界のあり様に激しく苦悩するのですが、同時にそれこそが作家漱石誕生の主エンジンにもなったのでありました。

 ……ということで、次は「第三部」です。
 この間ネットで見つけて購入したら、もう届いて、今、横にあります。
 一気に続けた方がいいんでしょうかねぇ。(でも本作は5部作で、かつ未完の大作なんですが……。)


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Last updated  2017.03.13 07:38:26
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