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analog純文

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2018.03.04
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  『マークスの山』高村薫(ハヤカワ書房)

 先日、作家中川右介が推理小説について書いた本を読んでいると、日本の推理小説の黎明期に、「日本初の本格探偵小説作品論」と評価するべき小酒井不木の文章が引用されていました。こんなことが書かれてありました。(文中の「探偵小説」という用語は、ほぼ「推理小説」と理解していいと思います。)

 ​探偵小説の面白味は言う迄もなく、謎や秘密がだんだん解けて行くことと、事件が意表外な結末を来す点にある。而もその事件の解決とか、発展とかが、必ず自然的でなくてはならない。換言すれば偶然的、超自然的又は人工的であることを許さない。其処に作者の大なる技巧を必要とする。​

 この文章は大正十二年に書かれたものですが、ほぼ現在の推理小説にも当てはまるように思います。もっともこれは基本的な「定義」めいた文章で、特にラディカルなことは言っていないせいでもありますが。

 今回の読書紹介の本書も、作品の内容を当てはめていくと、ほぼ上記の「定義」内に収まります。ただ、本書はいわゆる「倒叙型」(この言葉も中川評論で知ったのですが、犯人が誰であるかは早い内に作品に描かれて、その読者が知っている事実を探偵がいかに推理するかという書き方)の作品だから細かな部分はややそぐわない所もありそうです。

 ということで、本作は結局の所「推理小説」であります。
 何を当たり前のことを言っているのだとお思いの貴兄、すみません、すべてわたくしが悪いのです。私の勝手な思いこみでありました。少しだけそのあたりを説明させていただきます。

 実は高村薫の作品は、わたくし初めて読みました。
 なぜ初めて手に取ったのかと言いますと、高村氏がテレビなんかで時々、様々な社会的事象についてコメントをなさっている姿を拝見したんですね。そしてその内容をよく聞いていると、なかなか私にとっては納得できる、共感を覚える趣旨でありました。

 で、わたくしはこう考えました。
 かつて平成の始め頃までですか、あたかも「天下のご意見番」のごときお方として私は司馬遼太郎氏を考えていました。しかし司馬氏が亡くなって、次に私が考えたお方は養老孟司氏でした。しかしこの方もご高齢で、また司馬氏ほど社会事象に広くコメントをなさる方ではなく(頭はすっごく良さそうな方でありましたが)、少し物足りなかったもので、合わせ技で考えた人物が内田樹氏でした。

 とそんなことをなんとなく考えていたところに、上記の高村コメントに何度か接したもので、次代の「ご意見番」はこの方ではないかと、まぁ、そう思い、それならば御本職の小説も少しは読まねばなるまいと手に取ったと、そんな次第であります。

 この小説、百万部も売れたんですってね。……うーん、本当に百万人も読んだんでしょうか。だって、とっても長くてとっても重い内容であります。私は読んでいてとてもしんどくて、寝ては悪夢にうなされそうでありました。

 ただそのことについては、私があまり推理小説を好みとしていないという個人的理由によるのかもしれません。私が推理小説(特に本格的社会派推理小説)をあまり好まない理由は、まず殺人などの残酷な場面をリアリズムで読むのが嫌なこと、そして犯罪者の特異な内面描写も読むのが辛いことの2点(しかしこの2点は、よく考えてみれば推理小説の「華」ではありませんか)です。そして本作はこの両方を含んでいます。(二つめは倒叙型の作品ゆえに普通より多く。)

 では、なぜそれでも何とか最後まで読み切ることができたか(私は文庫本でない版で読みました。二段組みで440ページあります)と言いますと、やはり冒頭に書いた小酒井不木の書いた推理小説の評価ポイントがとても高いと感じたからでありましょう。
 440ページをじっくりストイックに書ききった筆力は、やはり並のものではありません。

 少し前に、新聞の文芸時評でしたか、高村氏の新作が推理小説的展開から離れ始めているとあったような気がします。
 この度私は、初めて読むのに、まぁ最も有名な作品からと思ったのですが、そもそもの動機が推理小説的長所以外のものを期待していたのですから、その新刊から入った方がよかったかもしれません。

 例えば筒井康隆氏がSF小説から入って、今やその枠組みに全く収まりきらない小説群を書いていらっしゃるように、わたくしの(勝手な)希望としては、小説ジャンルを飛び越えるスケールの作品を、高村氏もどんどんお書きいただきたいものであります。

 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ 





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Last updated  2018.03.04 08:20:24
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