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カテゴリ:昭和期・後半男性
『きみの鳥はうたえる』佐藤泰志(河出書房)
知人から紹介されて本書を読みました。 馬齢を重ねてくると、つまらないことにまで保守的になり、今まで読んだことがない作家の本を読むこともなんだか億劫になったりします。これは精神の老化以外の何ものでもなく、いかんなあと思いながらもつい手が出なかったりするので、そんなとき知人から勧められるというのはなかなか有り難いものです。 というわけで初めて読んだ作家でした。 しかし、本書の筆者は新進気鋭の作家ではなく、既に亡くなって三十年近くなる方です。ただ、ここ数年間に再評価が進んで、幾つかの小説が原作として映画化されたということでした。 なるほどと思ってちょっとネットを覗いてみるといろんな事が分かりました。 一時期村上春樹と並び称されたとあります。 確かに、同世代です。(両者とも1949年生まれです。学齢は村上春樹の方が一年上ですが。)前後して、両者とも何度か芥川賞候補になっています。そして、村上春樹の『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』と同様、本書もいわゆる青年の新しいライフスタイルを描く「青春小説」であります。 実際私は途中まで読んでいて、確かに初期の村上春樹の作品に似ているなあと感じていました。しかし村上春樹がデビューした頃、この手の青春小説が、様々な若い作家によってぽろぽろと描かれていたのではなかったかと思い出しもしました。 なぜその頃一気にそんな小説が現れたかというと、私のバイアスの懸かった「歴史観」によりますと、原因は学生運動の終焉ではなかろうか、と。 そんな作品群の嚆矢は、これもわたくし的には、村上龍の『限りなく透明に近いブルー』ではなかったかと思うのですが、村上龍ほどの刺激的な経験がなくってもみんなが俺も書くぞといろいろ書き出した、と。 数年前に直木賞を受賞した佐藤正午という作家も、そんな「出自」の方であったと記憶します。 では、本書が村上春樹に並ぶくらいの作品かと考えますと、取りあえず私はこの一冊を読んだだけですが、それだけでいえば、やはりそれはかなりひいき目だろうと思います。 同世代であることと、後似ているのは、何度か芥川賞の候補になりながら両者とも受賞し損ねたということがありますが、うーん、どうでしょうか、佐藤氏の場合は、本作では芥川賞は少し難しいんじゃないかなという感じが私はします。 一方、やはり芥川賞を逸した村上春樹の方ですが、村上春樹の芥川賞取り損ない「事件」については、その後の村上春樹の「大化け」から、芥川賞側の見る目のなさが一部取りざたされ、そのせいで幾つかの内部事情が明らかになっていますね。 『風の歌』については、村上氏が翻訳もしていたことから、外国文学からの影響(甚だしければ「剽窃」)が確認しきれなかったので見送った。『ピンボール』については、前作の方がよかったから、もう一度次作を待とうとしていたら、次に『羊をめぐる冒険』が出てしまって、芥川賞対象から外れてしまった(もはや芥川賞対象の中編小説ではなくなった)、と何かで読んだことがあります。 ……えっと、閑話休題、しますね。放っておくといつも「閑話」になってしまい、申し訳ありません。(まぁ、全話閑話のようなものではありますが……。) で、さて、村上春樹は上記に挙げたデビュー作と第2作を、レベル以下だとして長く外国語への翻訳を許可しませんでしたが(数年前に翻訳されたそうですが)、それは書いた本人だからいうことで、この2作は、何といいますか、とてもキュートで面白いです。(現美人の女性の十代の写真を見て、やっぱりかわいらしい十代を確認したような感じですかね。) それに比べますと本小説の欠陥は明らかで、少しきつくいえばストーリーが、これ、「破綻」していませんかね。 「破綻」は言い過ぎですか。でも終盤になってあんな事件を持ち出して、読んでいてわたくしは、なんといいますか、思わず「文学的誠実さを疑う」という感想を持ってしまいました。 それまでは、達者な書きぶりだなぁと思っていただけに、これは何かなーとかなり戸惑ってしまいました。 筆者は本作で芥川賞候補になって以降さらに数回候補になり、三島賞の候補にもなり、しかしすべて受賞までには至らず、41歳で自殺します。 ウィキペディアによりますと、十代から文才を謳われていたとあります。現在再評価が行われつつあるとはいえ、一種の「早熟の不幸」でありましょうか。 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.11.25 11:10:13
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