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近代日本文学史メジャーのマイナー

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2020.07.11
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  『三四郎』夏目漱石(岩波漱石全集第五巻)

 よし、『三四郎』を読もうと思いました。その理由は下記に記しますが、さて、何で読もうかな、と。
 何で、というのは、家には角川文庫、新潮文庫、そして新書版の漱石全集がありまして、そのどれで読もうかと思ったんですね。で、なんとなく角川のを取り上げて読み始めたんですが、……うーん、この角川だけでなくどの本も古いものだから、とっても字が小さい。特に角川文庫なんて紙が焼けかけていますので、重ねて読みにくいということがわかりました。

 しかし他の本にしたところで大同小異であると感じた私は、思いつきまして、そうだ、図書館に新しい漱石全集があったっけ、と。
 急いで図書館に赴き、借りてまいりました。漱石全集第五巻です。

 うーん、えらいものですねー。いやー、感心しました。
 というか、改めて堪能いたしました、『三四郎』を。
 『三四郎』を堪能したということは、もうそのまま明治の青春を堪能したと同じことであります。私はまれに見る、非常に充実した読書体験を持ったのでありました。

 さてどこがそんなに良かったのかと言いますと、えー、3点あります。
 まず、この漱石全集には、朝日新聞掲載時と同じ章と回の番号がありました。
 文庫も以前の新書版の漱石全集も、章番号だけ、つまり『三四郎』なら13章に分かれていますが、各章のはじめだけにその章番号が書かれていました。

 ところが今回の全集は、新聞掲載時と同様に、章の下に各回の回数も書かれています。つまり「三の九」(第三章に入って連載九回目)とか「十二の五」(第十二章に入って連載五回目)とかが振ってあるわけです。

 これがあると、読んでいてどう違うのか。
 全然違います。
 漱石が、連載各回のラストを、いかに読者に次回を期待させるべく「釣った」区切りにしているか、本当に目から鱗が落ちる様にわかります。
 それは思わず笑みが出そうなほどで、何と言いますか、うーん、新聞小説作家漱石、頑張っているなぁという、朝日新聞掲載リアルタイムめいた共感を持ちます。これがまずよかった。

 二つ目によかったのは、この巻の月報にあった小宮豊隆の文章でした。
 これはもちろん昔書かれた文章の再掲でしたが、不勉強な私は初めてこの文章を読み、たくさんの驚きがありました。
 書かれてある内容は、『三四郎』中のいろんなエピソードのモデルについてでありまして、そこにはかなりびっくりすることが書かれてありました。

 例えば、『三四郎』冒頭の「名古屋の女」の話にはモデルがある、ということです。漱石の弟子筋にあたる松根東洋城の友人の体験だとあります。さらに、小宮豊隆の知人も、「名古屋の女」と同じような体験をしたとあります。

 これは、ちょっと驚きましたね。
 この「名古屋の女」の存在は、作品が始まって早々の展開の中で、第一級に重要なエピソードであります。それが、漱石の純粋創作ではなかった。(とはいえ、そこにはもちろん漱石らしい抜群の脚色が施されているのではありますが。)

 と、私ここでふっと思い出したのですね。そういえば「フーテンの寅さん」の中にも、何だかよく似た展開がなかったか。確か、宮本信子さんが出ていたお話ではなかったかしら、と。

 だとすると、この「名古屋の女」のパターンは、「結構」とは言わないまでも「まれには」あった話なのかもしれません。
 そんな、これ以外にも驚きの多い小宮豊隆の文章を読みました。面白かった。

 そして三つ目によかったのは、新しい巻末注釈の斬新さであります。実はこれが一番良かったですね。
 さすがにあれこれと漱石研究が進化しているんだなと思わせる、様々な知見の一端が読めて、とても感心しました。

 一例を挙げますと、上記の「名古屋の女」の話の続きですが、そもそも主人公三四郎の、この女に対する言動については様々な説があって、中には三四郎の方に強い下心があったのだとする説もあったりします。
 今回このあたりの注釈に、こんなことが書かれてありました。

 東海道線で東京に向かっている二人ですが、その日汽車が名古屋どまりなもので、三四郎は女に頼まれて宿屋に一緒に行きます。そして同部屋で一夜を明かすという話ですが、翌日女は、名古屋から関西線で四日市に行くといいます。ここに入っている注です。

​ (略)なお、三四郎と一緒に泊まった女が、京都から草津経由で関西線を使えば、その日のうちに四日市に着く可能性もある。(略)漱石がこれらのコースを知っていたかどうかは不明。​

 どうですか。例えばテクスト論的な評論なんかでは、この事実があれば、上記の「三四郎下心」説などは、成立し難くなるような気がしますね。

 というふうに、新しい注釈がどんどん入ってきていて、巻末の注を読むのがとても楽しかったです。

 これは、閑話のようなものですが、ひとつ、よくわからない注を発見しました。
 詳しく書くのも何なので、もし興味をお持ちの方は、実際に全集本にあたっていただきたいのですが、426頁の「stray sheepの意味」について書かれた注です。

 何度か読みなおしましたが、どう読んでも、注の内容がおかしいように思うんですがね。でも、天下の岩波漱石全集の注ですからねー。私の勘違いなのかなーとも思いつつ……。
 (「sheep」が単複同形だから云々と書かれてありますが、ここは「迷へる子」の表記と「ストレイ、シープ」の美禰子の発声の事に触れているんだと思います。)

 というところで、次回に続きます。どうもすみません。


 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ 





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Last updated  2020.07.11 11:23:39
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