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カテゴリ:平成期・平成期作家
『地球星人』村田沙耶香(新潮文庫) さて「まくら」は、日本文壇の半期に一度のお祭り、芥川賞の事であります。 いえ、私は新聞やテレビのニュースなんかの報道では適当に興味を持ちつつも、受賞作について、毎回きちんと読んでいるわけではありません。(昔、わりとしっかり読んでた時期はあったんですけれどね。) そんな私の適当程度の興味でぼんやり見ていても、近年相変わらず女性作家が快調という感じがしますが、例えてみれば、大晦日の紅白歌合戦で、ここんところずっと紅組の勝ちーというところでありましょうか。 上記に私は、しっかりと芥川賞受賞作を読んではいないと書きましたが、受賞してしばらくして、まー、はっきり言えば、受賞作が文庫になったあたりで、ぽつぽつ読んではいるんですね。(穴あきながら) 一時期、いわゆる「こじらせ女子」系の作品が連続して受賞しませんでしたか。 ああいう感じで「同系統」っぽい作品が連続して受賞するのは、芥川賞の歴史で言えば、「第三の新人」作家が次々に受賞した1950年代あたり以来ではないですかね。 芥川賞受賞作の年譜を見ていますと、1950年代は見事に、今でいう「第三の新人」作家たちが次から次へと受賞していますね。(それは5年ほど続いて、開高健、大江健三郎の受賞で終わりを告げます。) すみません。話題が大きく逸れてしまいました。 一時期「流行った」「こじらせ女子」の作家の皆さんは、その後も頑張っていらっしゃるんでしょうね。 私が読んだ数名の方々の名前が頭に浮かびますが、その中で最もラディカルに、時代のテーマをくっきり描いていたのが、今回報告する作品の筆者、村田沙耶香ではなかったか、と思い出します。 『コンビニ人間』が芥川賞受賞作ですね。あの小説はわたくし、とっても出来のいい小説だと思いました。 そして、冒頭の作品は、その次に発表された長編小説だそうです。 なるほどねぇ。 なるほどというのは、少なくとも設定が、とてもよく似ているんですね。 「こじらせ女子」と上記に何度も書きましたが、その特徴は二つにまとめると以下のようになります。 1.自己肯定感の極端な低さ 2.「コミュニケーション障害」 この二つはいわば、多かれ少なかれほとんどの現代人に我が事として心当たりのあるもので、だからこそこのテーマの小説がヒットしたのでしょうが、さらに小説作品は、この特徴をかなりフィクションで煮詰めた形で表現します。 この度の小説もそうでした。 というより、今回筆者は、上記の二つの負の特徴の原因とでもいうべきものを、「モラル」と断定するんですね。 自己肯定感が低いのも、他者との意思疎通が不如意なのも、突き詰めていけばその社会のモラル、人間(=地球星人)の普遍的モラルに、個人が決定的に馴染めないせいだ(そんな個人がいるのだ)と考えるわけです。 そして、筆者が過激な物語作りをするのはここからなのですが、作品終盤、モラルから逃れて逃れて、そして最後に残るモラルは何か、そしてそれをも捨て去る主人公たちの姿が一気に描かれます。 さて本作の評価は、この部分をどう考えるかということでありましょう。 というより、もっとはっきりいえば、私がどう感じたかということで、それはいわゆる個人的な性癖に則った個人的な意見ということです。(すみません、当たり前ながら) 我が事ながら振り返ってみますと、わたくしは結構倫理的なものが「好き」なんですね。 古臭く滑稽な言い方をしますと、倫理的な生き方に則って克己的に生きる、というのが、好みなわけです。 そんな私が本作を読み終えると、……うーん、極めて後味の悪い読書、ということになりました。まー、それは好き嫌いの話なので、致し方ありません。 ただ、作品の終盤に現れる状況が、本当にあっと驚くようなものかというと、そうでもなく、途中から何となく予想がつきます。 上記の「最後に残る人間の普遍的モラル」を考えていけば、割と常識的に辿り着くものなわけですね。(それは、ここでは書かないのがルールでしょうね。文庫本の裏表紙の宣伝文には「「驚愕をもたらす衝撃的傑作」とありますが。) とすれば、本作がジュブナイル的な形をせっかく採っているのに、という前提でありますが(リアリティを展開より下位に置くという形、ですかね)、ひょっとすると、(個人的に読後感がよくなかったからのいじわるではありませんが)本作のおける筆者の想像力の飛翔程度は、前作『コンビニ人間』程には高くなかったのかもしれません。 (蛇足の蛇足に考えたのですが、この『地球星人』が、『コンビニ人間』より先に発表されていたら評価は変わるんでしょうかね。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.12.11 09:25:01
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