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近代日本文学史メジャーのマイナー

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analog純文

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2022.04.17
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​  『大阪的』津村記久子・江弘毅(ミシマ社)

 なんかパンフレットみたいな本です。薄い。95ページです。私は上記に「ミシマ社」と書きましたが、最初は出版元がわからなかったりしました。

 そんな本をなぜ読んだかと言いますと、図書館のホームページで検索したら出てきたので予約した、ということですね。
 では、何を検索したかというと「津村記久子」であります。

 この作家は、わたくしさほど多くは作品を読んではいませんが、現代日本文学の相対的に若い作家の中では(筆者の紹介欄を見て、もう若い作家とは微妙に言い切れないと知りました)、多分一番好きだからであります。

 ということで、すごく薄いし、内容の半分以上は対談でもありますし、一気に読んでみました。
 対談が中心ではありますが、その前に20ページほど、津村記久子が出生地であり現在も住み続けている大阪について述べている部分がありました。
 ここが、やたらと面白い。
 かつ大阪論として、私にとってはとっても説得力がありました。

 わたくしも関西に住んでいるもので(関西と大阪は、当然違いはするのですが)、過去に何冊か「関西論」(これも厳密には「大阪論」にあらず)を読みました。
 なんとなく面白かったと記憶に残っているのは、織田作之助のと中島らものであります。
 特に中島らものは、大阪は、もはや身内だけが安住して互いが油断しまくっている、みたいなことが書いてあって、なるほどと納得します。

 で、今回の津村大阪論も、なかなかとっても納得するんですねー。
 以下にそれを紹介しようと思うのですが、どこを引用すべきか、引用したい部分ばかりで困っています。
 仕方ないので、ギリギリの引用で報告してみようと思います。

 まず、筆者は大阪について、こう宣言します。

​ 大阪つまらんと言い続けてきたけど、それは「住んでいるから」というエクスキューズなしにつまらん場所なのかもしれない、という危機感をはらんだ感情である。​

 そしてその理由を、大阪が東京に対する意識として自分を「次女」だと思っていると例え、こう書いていきます。

​ こんなにうるさいし街全体が厚化粧だし、住んでいる人もくどいのに、以外と個性がないな、と思うことがある。(略)けっこうがんばって東京の真似をしているようなところがあるのだ大阪には。それこそ、お姉さんの真似をして、お姉さんの道具を使って化粧をしている妹みたいに。​

 そして筆者はそれについて、いろいろな挿話を説得力豊かに展開していくのですが、無理を承知で飛ばしますと、以下の二段階の結論に到達します。こんな感じ。

 長女へのコンプレックスを持った次女。自分は姉より美人だと言い聞かせながらも、どこかで姉の影響を振り切ることができない。姉のことをさしてかまわないという態度をとりつつ、わたしお姉ちゃんに似てる? とときどき誰かにたずねている。

 でももう、そろそろ「お姉ちゃんのほうが美人やね」と言われたことは忘れたっていいと思うのだ。なぜならもう、人口では横浜市に抜かれてしまったのだから。(略)実は次女じゃなかったんだよこれが。

 ……しかしこうして論理の筋道だけを抜き出してみると、なんだか面白みに欠けるような気がしますが、本文には、厚化粧のおばちゃんを中心にたこ焼きの話とかサッカーの話(筆者は熱狂的なファンです)とかが満載です。

 さて、このように大阪よ、もう次女はやめろ(次女でもないし)と書いた筆者が、大阪に対してこの先どのようであれと書いているか、それを最後の引用にしようと思います。ここも「次女」がらみの比喩です。

​ 次女である大阪が一生懸命に姉の道具を使って真似をしているところ、六女とか七女が自前の絵の具を使ってめちゃめちゃかっこいいトーテムポールみたいなフェイスペイントで大暴れしていて、それがすごく自由でうらやましい、みたいな感じだ。​

 また他の部分にはこのように書いてあります。
 東京を中心だと、大阪がいつまでも勝手に対抗意識を持って考えていた間に、時代はその中心性を意識しないところに大きく変わりつつある、と。

 ​「汎用性や中庸さは二の次である。」​

 なるほど、なかなか説得力ある結論ではありませんか。
 さらに、この堂々とした結論に加え、私が特にある「別種の説得力」を覚えるのは、筆者が自らの主張を述べた後の少なくない部分に、このフレーズを付け加えていることです。

 ​「知らんけど。」​

 ……さてここまでお読みいただいた貴兄、恐れ入りますが、上記に私が筆者の主張として引用した各部分のお尻に、改めてすべて「知らんけど。」を付け加えもう一度お読みいただけますでしょうか。

 そうすれば貴兄は、筆者の思いがけない強靱な論理の相対性、すなわち大阪の思いがけないしたたかさを、きっと発見するものと思います。……知らんけど。


 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ 





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Last updated  2022.04.17 08:38:50
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