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近代日本文学史メジャーのマイナー

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analog純文

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2022.05.28
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  『爪と目』藤野可織(新潮文庫)

 2013年の芥川賞受賞作です。
 ……ふむ。

 ……あ、……えー。
 ……えー、まー、困っとるわけですね。
 何に困っているのかというと、まー、この作品のどこがよくて芥川賞なのかが、わたくしの現代文学的センスのなさで、さっぱりわからへんのですね。

 いえ、こんな小説もあるんだろうなあ、というのはわかるんですね。
 実はこの文庫本には3つの作品が収録されています。話がはやいんで下記にページ数も含めて一覧にしますね。

 「爪と目」101ページ
 「しょう子さんが忘れていること」24ページ
 「ちびっこ広場」28ページ

 こんな感じの構成です。(ついでに触れておきますと、本文の活字が、普通の文庫本の活字よりふたまわりくらい大きいです。それは本書の最後にある解説文の活字と比べても大きいです。)

 この構成は、よーするによくある芥川賞受賞作の一冊本パターンですね。
 受賞作だけでは少し足りないんで、それまでのやや習作めいた作品を一緒にして一冊にしちゃうと言う。(活字まで大きいのはちょっと、何というかー……。)

 で、上記のこんな小説もあるんだろうなあに戻りますが、この3作共がみんな同じような雰囲気なんですね。で、あ、そうか、この作者にとって小説とはこんな雰囲気のものなんだ、ということがなんとなく感じられて、そこはそれ、そもそも小説というものは何をどう書いてもいいものですから、ああ、こんな小説もあるんだなー、という部分については、私は一応納得するわけです。(ちょっとしつこくねじくれた説明ですかね。)

 でも、何をどう書いてもいい小説ではありますが、やはりそこには、一応の優劣というものがあるのではないかしらと。
 そして、芥川賞に選ばれたくらいなんだから、「優」の部分がたくさんあるはずだと思いつつ、さて、読み終えて私は、「ねえ誰かこの作品のどこが芥川賞なのか教えてよ」状態になったと言うことでありますが、……こまりましたなー。

 例えば私ごときでも、本小説の工夫についていくつかの指摘はできます。
 それはまとめて一言で言えば「人称」の工夫ですね。

 読みはじめてすぐに誰もが気づく「二人称小説」であります。
 二人称小説と言えば、私の貧弱な文学的教養で思い浮かぶのは、今となってはかなり昔の作品、倉橋由美子の『暗い旅』であります。
 多分高校生の頃に私は読んで、よくわからなかった小説でした。
 あれが「あなた」で描かれた二人称小説だったんですね。(この二人称がフランス現代文学の影響の元に書かれているということも、少しして私は知りました。)

 でも今回の本書は、よく読んでいくと「二人称小説」じゃありませんね。しばらくすると「わたし」が出てきます。
 この「わたし」が三歳の女の子という設定で、これはこれでまた別の工夫ではあるのですが、とにかく作品内に「わたし」も出てくる以上、厳密には二人称小説ではないんじゃないでしょうか。(「厳密な二人称小説」という書き方がふさわしいのかどうかよくわかりませんが、私のイメージで言えば、例えば漱石の『坊っちゃん』の「おれ」の部分に「あなた」が一貫して置き換えられているお話が「厳密な二人称小説」という感じなんですね。もっともそんな『坊っちゃん』って、笑ってしまいますがー。)

 というわけで、読み始めてしばらくして私は、これは二人称小説とは言いがたいかなとは思いつつ、ただ頻繁に「あなた」表記が出てくるので、二人称小説の、読んでいて少しくらっとくるような眩暈感は読み取れて、それはそれで結構面白かったです。

 加えて、「わたし」の父、母、そして「あなた」の母親などが出てきて、よく似た表記がわざと混乱を導くかのように描かれ、さらに(これも筆者の表現上の工夫ですが)本来作品中の「わたし」が窺い知ることが不可能な場面や人物の内面描写が、これまた再三に出てきて、かなり「メタ小説」的に読者を混乱させてくれます。
 このあたりの混乱感覚が、結構さっきの「くらっ」の続きで、目新しく面白くもありました。
 ただねー、ただそれだけでは、なかなか一つの小説は引っ張りきれないでしょう。

 以前からわたくし思っていましたが、芥川賞というのは、例えばプロ野球で言えばMVPの賞ではなくて、その年の新人王であるんじゃないか、と。
 ピッチャーで言えば、新人が10勝くらいしたらもらえる賞かな、と。
 じゃあ、芥川賞にとっての10勝とは何かというと、それはとにかく「新しいこと」ではないか、と。

 上記に私は、本作について、いわば日本語の持つ人称の独特な用法を効果的に用いたことが面白かったとは書きましたが、しかし、申し訳ないながら、それだけでびっくりするほど「斬新」とまでは思えませんでした。

 私は読書報告をするに当たって毀誉褒貶の「毀」と「貶」は基本的に書きたくないと思っています。今回の報告もそのつもりであります。
 ただ、本当にわからないんで、いえ、本当にどなたか、本作のどこが新しく優れているのか、ぜひともお教えいただけたら、と思うものでありますが。……うーん。


 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ 





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Last updated  2022.05.28 20:53:05
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