【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

近代日本文学史メジャーのマイナー

近代日本文学史メジャーのマイナー

Calendar

Archives

Recent Posts

Freepage List

Category

Profile

analog純文

analog純文

全て | カテゴリ未分類 | 明治期・反自然漱石 | 大正期・白樺派 | 明治期・写実主義 | 昭和期・歴史小説 | 平成期・平成期作家 | 昭和期・後半 | 昭和期・一次戦後派 | 昭和期・三十年代 | 昭和期・プロ文学 | 大正期・私小説 | 明治期・耽美主義 | 明治期・明治末期 | 昭和期・内向の世代 | 昭和期・昭和十年代 | 明治期・浪漫主義 | 昭和期・第三の新人 | 大正期・大正期全般 | 昭和期・新感覚派 | 昭和~平成・評論家 | 昭和期・新戯作派 | 昭和期・二次戦後派 | 昭和期・三十年女性 | 昭和期・後半女性 | 昭和期・中間小説 | 昭和期・新興芸術派 | 昭和期・新心理主義 | 明治期・自然主義 | 昭和期・転向文学 | 昭和期・他の芸術派 | 明治~昭和・詩歌俳人 | 明治期・反自然鴎外 | 明治~平成・劇作家 | 大正期・新現実主義 | 明治期・開化過渡期 | 令和期・令和期の作家
2022.06.18
XML
『あの子の考えることは変』本谷有希子(講談社)

 養老孟司のベストセラー『バカの壁』に、「バカの壁」とは何かの説明として、東大医学部の学生に授業をしていたら、もっとわかりやすく説明しろと何度となく言われ、業を煮やした筆者が、君は臨産婦の陣痛の痛みが本当に言葉で説明しきることができると思うかと迫ったら、絶句したというエピソードがあって、「バカの壁」とはこのことだという説明が、確かあったような、そんな気がするのですが、……えー、ちょっと心許ない……。

 突然何の話から始まったかと申しますと、私もいたずらに馬齢を重ね、今更になって、冒頭の小説の主人公、23歳で一人で東京でアルバイト暮らしをしている女性の心情が、実際のところほとんどわからないということに、本書を読み終えて、プールに行って1キロくらい泳ぎながらぼんやり考えて、でも、やはりよくわからないと気づいたと言うことであります。

 養老孟司の言っていることは、詰まるところ言語コミュニケーションの限界と言うことでしょう。
 ついでに上記の養老のエピソードには後半があって、そんな風に言葉では説明しきることはできなくても、500例くらいも出産の臨床をすれば、妊婦の陣痛の痛みがわかってくる、という展開だったと思います。(ちょっと違ったかもしれません。すみません。)

 で、さて、小説とははたして、言語コミュニケーションなのでしょうか、500の出産の臨床なのでしょうか。

 タイトルからも連想できそうですが、この小説に出てくる女性は二人いまして、一人称の方(一応主人公ですかね)が「巡谷」、三人称の方が「日田」で、どちらも上記の簡単な説明のような設定になっていますが、彼女たちの考えることは確かに「変」です。

 どう「変」かというと、それがまー、「遊び」のように「変」なんですね。
 「遊び」のように「変」って、この説明も大概なものだとは思いますが、これもなんと言うか、生活実態のない思考とそれに基づく行動形態、という感じでありましょうか。

 引用がうまくできればいいのですが、なんかどこがどうなっているのかよくわからないところがありまして(よーするに思考の流れが普通によく読めないんですね)、取り敢えずはじめの方の短い挿話をひとつ抜き出してみますね。

 部屋にやって来た日田が、暇だからあなたの人生にタイトルをつけます、と言い出して『巡谷の、突然死にたくなる一億の瞬間と、それ以外。』と寝そべりながら、ノートに書いた。
「何それ。」
「いや。なんか、普段の巡谷見てての印象だけど。特に深い意味はないんだけど。」
 深い意味なくないだろ。突然死にたくなる一億の瞬間って。

 どうですか。
 こういうのって、センス、なんですかね。
 悪くないですよね。でも、ここは軽いところですが、こんなのの重い話や軽い話が全編にいっぱい書かれているんですね。
 ……、んー、ちょっと、これって、何なのって、思ってしまいます。

 つまり、なんでこんなものの考え方になるのか、どう成長したらこんな人格ができあがるのか、ということで、これにリアリティはあるのかと言い直してもいいのですが、まー、戸惑うわけです。
 そこで、はたと思い至ったのが、上記の、そもそも東京に一人で暮らす23歳の女性のリアリティが私にわかるのかということであります。

 でも例えば、おまえに漱石の『三四郎』の里見美禰子のリアリティが理解できるかと問われたならば、断定はできないまでも少なくとも共感できるところまでは理解できると、きっと私は答えそうです。
 何を根拠にとさらに突っ込まれれば、それは漱石の作品の書き込みゆえに、と答えそうであります。

 さて、作中の「日田」は自らについてこんな風にも語っています。

「……じゃあ巡谷はさ、一回でいいから私の孤独、ちゃんと想像してみてくれたことあるの?」と呟いた。
「もういい! あんた、うるさいよ!」
「ねえ、巡谷。一回でもいいから想像してみてよ……! 私の孤独! すさまじいから……!」

 孤独が、その原因なのかあるいは結果なのか、ともかくキーワードとして出てきますが、どちらにしても孤独に極めて近いものの姿がこの人物たちの「変」さであるとは、どうもわたくし、理解しきれません。

 もっとも、それだけではなく、実はこの二人の人物たちもかみ合っていそうであまりかみ合っていませんし、もう一人出てくる男の登場人物も、やや段取り的書き込みで主人公たちと有機的関係ができているようには読めませんでした。

 以前同筆者の小説の文庫本を読んだとき、解説文に「こじらせ女子」という言葉が出てきて私は興味深く思いましたが、本小説の女子たちの「こじらせ」ぶりについても納得できなければならないなら、これはちょっと、もはやわたくしは、このテの現代小説には「縁なき衆生」なのではないかと、この度、戸惑い考えるものであります。……。


 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ 





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2022.06.18 12:46:22
コメント(0) | コメントを書く
[平成期・平成期作家] カテゴリの最新記事


PR

Favorite Blog

アディル&ビラル「… New! シマクマ君さん

7月に観た映画 ばあチャルさん

Comments

aki@ Re:「正調・小川節」の魅力(01/13) この様な書込大変失礼致します。日本も当…
らいてう忌ヒフミヨ言葉太陽だ@ カオス去る日々の行いコスモスに △で〇(カオス)と□(コスモス)の繋がり…
analog純文@ Re[1]:父親という苦悩(06/04)  七詩さん、コメントありがとうございま…
七詩@ Re:父親という苦悩(06/04) 親子二代の小説家父子というのは思いつき…
√6意味知ってると舌安泰@ Re:草枕と三角の世界から文学と数理の美 ≪…『草枕』と『三角の世界』…≫を、≪…「非…

© Rakuten Group, Inc.