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近代日本文学史メジャーのマイナー

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analog純文

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2022.08.01
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  『通天閣』西加奈子(ちくま文庫)

 初めて読む作家です。
 直木賞の受賞作家で、それなりの売れっ子作家の方じゃないかなというくらいの先入観を持っていました。
 でも、本ブログからおわかりのように、わたくしはどちらかと言えば、芥川賞系小説の読者であることが多いのであります。

 でも、そのことについて改めて考えるのは、もうあまりしないことにしています。
 それは、考えるのにほぼ意味がないことと、あえて考えたとき、芥川賞系作品の読者であることの「メリット」が、あまり見当たらないからでしょうかね。

 ということで、この作家の小説もわたくし初めて読む小説であります。
 さて、今上記に私は直木賞と芥川賞の違いなんて考えても何の意味もない、みたいなことを書きましたが、その舌の根も乾かないうちに、実は読み終えてこんなことを考えたんですね。

 本書の文庫解説を津村記久子が書いています。
 津村がなぜ書くかと考えると、それは言うまでもなく「大阪系」だからですね。
 西加奈子も津村記久子も大阪人であります。そして私が本書を手に取ったのもやはり、大阪とまで限定せず、関西の文学の魅力を読むことができるかと思ったからであります。

 そう思って読んだんですね。で、それなりに面白かったです。
 そして、津村記久子の解説まで読んで、私はふと津村の小説と西の小説はどこが違うだろうかと思ったんですね。ご存じのように、津村は芥川賞受賞作家であります。

 ……んんーと考えて、何となく感じたのは、津村の作品のほうが、作者である津村自身の姿めいたものが、西作品よりも少し前面に出ているんじゃないか、ということでありました。
 このことをもって文学性をうんぬん、というつもりはありませんが、津村作品が芥川賞っぽいとすれば、やはりここなんじゃないか、と考えるものであります。
 もう少し具体的に考えてみます。二つ、私は思いました。

 ひとつ目は、描かれる関西人的性格の造形です。
 本書は、読んでいて、とてもデビューしてまだ数年とは思えないような達者な文章であります。ただ、いかにも関西的クドさを持つ人物がしきりと描かれ、「関西ネイティブ」の私としては、これは、全国的に関西的性格として共通理解されている「類型」をなぞっているんじゃないかという気が、少ししました。

 二つ目は、これは、その時代的限界なのでしょうか、今らしい言い方で言うと「性同一性障害」の方に対する「揶揄」ですかねー。
 即物的にいえば、漫才の「ボケ」役としての「オカマ」であります。
 ユーモラスな描写の中心に、関西弁自体の描写と並んで、ほとんどずっとこれらの人物が描かれています。

 「時代的限界」と書きましたが、昔の作品でもそんな扱いをしない作品は少なからずあります。しかしかつてのエンタメ系の作品においては、あらゆるメディアを問わず「ボケ」役割であったように思います。

 (ただ、関西人的性格の一つに「タクシーの列のジジイ」「サウナのジジイ」という人物が出てきますが、この造形はなかなかリアリティがありました。)

 と、何か批判的なことに触れたようですが、ただ本書には、いわばいかにも直木賞的なストーリーの面白さと迫力があります。
 これこそが、おそらくは芥川賞系の作品にほとんど感じられないものです。

 冒頭に私は、芥川賞系小説の読者であることのメリットが見当たらないと書きましたが、それは言い換えると、読んでいて単純に素直に面白がりながら読める芥川賞系の作品があまりないということであります。
 これは、私が好きで勝手に読んでいるとはいえ、結構つらい……。

 ただ、これについても、最後にもう一言。
 いろんなエピソードを継いで楽しく読めていきながら、最後のクライマックスの展開、あれが、少し、弱くないですかね。
 ……うーん、読者の我がままなのかもしれませんが、少しパワー不足を感じるとともに、いえ、なかなか、縦横無尽に天翔ける想像力というのは、実際得難いものであるなあと、これも読者の「特権」、申し訳ないながら、「ひとごと」のように思ったりしたのでありました。

 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ 





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Last updated  2022.08.01 09:16:41
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