【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

近代日本文学史メジャーのマイナー

近代日本文学史メジャーのマイナー

Calendar

Archives

Recent Posts

Freepage List

Category

Profile

analog純文

analog純文

全て | カテゴリ未分類 | 明治期・反自然漱石 | 大正期・白樺派 | 明治期・写実主義 | 昭和期・歴史小説 | 平成期・平成期作家 | 昭和期・後半 | 昭和期・一次戦後派 | 昭和期・三十年代 | 昭和期・プロ文学 | 大正期・私小説 | 明治期・耽美主義 | 明治期・明治末期 | 昭和期・内向の世代 | 昭和期・昭和十年代 | 明治期・浪漫主義 | 昭和期・第三の新人 | 大正期・大正期全般 | 昭和期・新感覚派 | 昭和~平成・評論家 | 昭和期・新戯作派 | 昭和期・二次戦後派 | 昭和期・三十年女性 | 昭和期・後半女性 | 昭和期・中間小説 | 昭和期・新興芸術派 | 昭和期・新心理主義 | 明治期・自然主義 | 昭和期・転向文学 | 昭和期・他の芸術派 | 明治~昭和・詩歌俳人 | 明治期・反自然鴎外 | 明治~平成・劇作家 | 大正期・新現実主義 | 明治期・開化過渡期 | 令和期・令和期の作家
2022.09.12
XML
  『砂のように眠る』関川夏央(新潮文庫)

 この文庫本は、かなり昔から私の本立ての中にあったのですが、この度ふらっと手に取ってふらっと読み始めて、今まで本書を最後まで読み切っていなかったことに気がつきました。
 そして、なぜ読み切っていなかったのかの理由についても、なんとなく思い当たるところがありました。
 それは、本書の構成のせいで、それについては筆者が「はじめに」という一文でこう触れています。

​ この本はかわったつくりかたをしてある。小説と評論が交互に六章ずつならび、合計十二章からなりたっている。​

 そして「奇をてらって選んだ変革的構成ではない。」と書き、さらに「『戦後』時代を可能な限り客観的立体的に描く方法」として考えたものだとあります。

 この度私は、ようやく本書を最後まで読み切って、筆者のこの「はじめに」の記述について、二つの感想を抱きました。

 一つ目は、私が今まで本書を最後まで読めなかった理由と重なっているのですが、全く個人的な好悪なのですが、はっきり言っちゃいますと、小説部分が面白くない。(スミマセン)

 筆者の短編小説については過去に1、2冊読んだ記憶があるのですが、例えばその報告は、この拙ブログには載せていません。なんといいますか、こんな感じの読書報告は載せない方がいいんじゃないかと思ってしまうような感想でありました。

 もう一言だけ突っ込んで書きますと、極く個人的に、「華がない」「理が立っている」と私は思ってしまうわけですね。(スミマセン)
 というのが一つ。

 そして、二つ目の感想としては、一つ目が否定的の感想であるにもかかわらず、しかし、なるほど、筆者が評論章の間に同時代を舞台にしたこのような小説の章を挟みたがったわけは理解できる、というものでした。

 つまり私は、この小説章がなければ、一冊の本としての戦後史の記述に、あまりに救いがなくなってしまうからじゃないか、と感じたのでありました。

 それは、少し陳腐な表現になりますが、「右も左もぶった切る」という言い方を本書の記述に重ねますと(私はかなり重なるんじゃないかと思うのですが)、本書の戦後史認識は、「右」はもちろんひどいが「左」も詐術的にひどいじゃないかと書かれているように思いました。

 そんな評論章だけを展開してしまうと、あまりに救いがなくなってしまう。確かにそんな時代だったかもしれないけれど、同時にそこにわれわれは、日常生活を勤勉に(あるいは放恣に)積み重ねていたじゃないかという記述が、どうしても別視点として必要だろう、と。

 いかがでしょう。
 ただ、そう思って本書を読めば、そこにはニヒリズムの影がつきまといそうです。
 そしてわたくしは、実は、この筆者の多くの作品にその匂いを嗅ぎます。

 本書は、戦後の各時代の精神を反映した6冊のベストセラーを提示して、その読み解きをするという形で評論章を進めています。
 その中で、おそらく筆者が最も共感したベストセラーは、終わりから二つ目に描かれる(もはや戦後と呼ばれる時期は終わったあとの)、いわゆる70年前後の「政治の時代」を舞台にした高野悦子の『二十歳の原点』でありましょう。

 私は筆者がこの『二十歳の原点』と作者高野悦子を取り上げた文章を、本書以外で二つ読みましたが、本書のその章の最後には、あれから年月がたつが、今どうやって生きているのだろうと思う女性のひとりとして、高野を挙げます(もちろん高野は二十歳で鉄道自殺を遂げています)。そして、最後の一文をこう締めくくります。

​ もはや家計簿の余白の心覚え以外には日記めいたものをかいていない高野悦子の、その中年になっても整った顔だちを想像するとき、やはりはるかなむかしに友をひとり失ったのだ、とわたしはひそかに思うばかりである。​

 最後にもう一つ極く個人的な感想を書きますが、筆者の評論文の魅力は、切れ味の鋭いシニカルな水際だった文章の中に混じる、こんな甘甘の部分にあるのじゃないかと私は思っています。
 そしておそらく、筆者はこんな部分をおのれが書くことに対して、ひどく恥ずかしがっているのじゃないか、とも。……。


 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ 





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2022.09.12 16:35:24
コメント(0) | コメントを書く
[昭和~平成・評論家] カテゴリの最新記事


PR

Favorite Blog

アディル&ビラル「… New! シマクマ君さん

7月に観た映画 ばあチャルさん

Comments

aki@ Re:「正調・小川節」の魅力(01/13) この様な書込大変失礼致します。日本も当…
らいてう忌ヒフミヨ言葉太陽だ@ カオス去る日々の行いコスモスに △で〇(カオス)と□(コスモス)の繋がり…
analog純文@ Re[1]:父親という苦悩(06/04)  七詩さん、コメントありがとうございま…
七詩@ Re:父親という苦悩(06/04) 親子二代の小説家父子というのは思いつき…
√6意味知ってると舌安泰@ Re:草枕と三角の世界から文学と数理の美 ≪…『草枕』と『三角の世界』…≫を、≪…「非…

© Rakuten Group, Inc.