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近代日本文学史メジャーのマイナー

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2022.12.31
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  『人間晩年図巻2008-11年』関川夏央(岩波書店)

 珍しく日本古典文学の話から始まります。
 といっても、本当は羊頭狗肉で、古典文学の事なんて私は何も知ってはいません。ただ、近現代文学を読んでいるとどうしてもそれに触れる部分は出てきて、結局の所、古典文学について書かれた本をけっこう読んだりはします。で、『源氏物語』はさすがに懐の深い作品なんだなーなどと、原文なんてろくに読んだこともないのに思ったりしています。

 さて、私がこの度ちょっと触れようとしたのは、『大鏡』であります。
 もちろんこれについても基本の所は何も知ってはいません。ただ、高校で「大今水増」なんて語呂合わせみたいな言葉を覚えたのと、もう一つは、「紀伝体」。

 えー、私がまくらで触れようと思ったのはこの「紀伝体」であります。
 この辺からちょっとしっかり順を追って説明していきますね。

 本書は5冊本であります。「人間晩年図巻」の総タイトルで、1990年から2011年までを、5冊シリーズで書いているんですね。
 今回私が取り上げたのはその最終巻で、最後に筆者の短いあとがきがあります。そこに、こんなことが書かれています。

 この本の題名は山田風太郎の名著『人間臨終図巻』の変奏である。
 山田氏がその六十代なかばに完成させた『人間臨終図巻』は、古今東西の歴史的有名人九百余名の臨終を、没年齢ごとに書いている。読者は、そのときの自分の年齢で死んだ人の記述から読み始め、英雄・天才の臨終時のリアリティと無情を味わった。
 それと違って、これは現代史の本である。

 このようにあって、これを読めば本書の内容がなんとなく分かります。
 ただ山田風太郎のは「臨終」で、本書が「晩年」であることについては、このシリーズ第1巻の「まえがき」に確か書かれていたように、わたくし記憶します。思いがけない理由が書かれてありましたが、多分そのせいで、上記引用文の最後の一文が出てきたのだと思います。

 「現代史」とあります。
 私、じーとこの言葉をにらんだんですね。
 で、ふっと、浮かんだのが、冒頭部の「紀伝体」である、と。
 なるほど、紀伝体で歴史を描くとはこういうことか、と思いつつも、しかし、なんだか腑に落ちない部分が残ります。
 実は上記の引用部は、さらにこのように続いています。

​ 現代史を、直接にではなく表現する手立てはないかと思案し、時代の刻印を受け、また時代そのものをつくった有名人・無名人、その全盛期と晩年の記述で実践してみた。​

 この引用部には、どんな基準でその人物を取り上げたのかについて書かれています。「時代の刻印を受け、また時代そのものをつくった有名人・無名人」という部分ですね。
 でも、これがけっこうわかりにくいというのが、読後のわたくしの感想でありました。

 例えば、飯島愛を取り上げた章の冒頭にはこうあります。

 一九八七年から一九九〇年までの「バブル経済」の時代は、タレント飯島愛の十四歳から十八歳にあたる。
 十四歳で学校から遠ざかり、十六歳から六本木と銀座のホステス、十八歳でAV女優となって、やがてテレビタレントに転じ、二十八歳で赤裸々な自伝『プラトニック・セックス』を刊行、百七十万部のベストセラーとした飯島愛は、まさに「バブルの娘」であった。

 なるほど「時代の刻印」というのは、こんな捉え方の結果であることが分かります。そのうえ、人物は有名タレントだから、けっこう興味深く読めたりします。

 ただ、様々な分野の人物を取り上げつつ、そして同時に現代史を描く(さらには適度に面白く描く)というのは、ちょっと、詰め込みすぎではなかったか、と。
 この人物が描かれているのについては、あまり面白くもなくかつ「時代の刻印」としてもちょっと強引じゃないかと、そんな風に、(勝手ながら)思う部分が少なからずありました。(でも、これについては、筆者=人物選者に一任すべきであるかなー、とも考えつつ。)

 あるいは、これは「紀伝体」の限界じゃあないのか、と。
 そもそも、紀伝体とは歴史記述としてはけっこう「穴だらけ」の方法ではありませんか。その穴をなんとか少しでも埋めようとしたら、かなり雑ぱくになり、部分も全体も少しずつゆがんでいく、と。

 いえ、そこまでは考えすぎかもしれません。
 ポイントは、「情報量」あたりにあるのかもしれません。よく知りませんが、本書の各章は、『大鏡』より短く、『人間臨終図巻』より長くあると思います。
 また「情報種」で考えると、『大鏡』は基本「政治家」(天皇・上皇に藤原氏)だけ、『人間~』は「歴史的有名人」だけで、わかりやすくあります。

 ただ、相変わらずの、筆者らしい個性的な描写は健在でありました。(私が偏愛する部分ですね。)
 上記、飯島愛の文章の中にこんな部分がありました。テレビ出演を始めた頃の話です。

​ 初回からの遅刻は、やはり「どうせ、すぐやめる」と思っていたせいだが、九二年晩秋、生放送を「バックレ」た。出演者たちは、テレビ画面から「愛ちゃん、怒らないからおいで」と呼びかけたが、彼女は部屋を出なかった。「捜索」を警戒して、ピザの宅配もドア・チェーンを掛けたまま箱をタテにして受け取った。ピザは崩れた。​

 最後の一文が、なんともいいですね。見てきたような嘘をつく、と。

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Last updated  2022.12.31 15:24:38
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