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2023.07.02
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  『あひる』今村夏子(角川文庫)

 わたくし、本書を古本屋さんで見つけました。
 文庫本に帯がついていまして、そこに、「芥川賞候補作&河合隼雄物語賞」とありました。
 芥川賞はともかく、河合隼雄さんってのは、心理学の人だったか日本猿の人だったか、その辺がよくわからないまま買って読み始めたら、若い女性と主に子供たちの話が始まったんですね。
 で、なんかわたくし、変に錯覚したんですね、これは児童文学なんだな、と。

 本書には三つのお話が収録されていて、最初の「あひる」を読み終えました。
 ところが読み終えた時、なんか、いきなりどこかに放り出されたような、少し嫌な感じがしたんですね。
 で、なんか、愛想のない児童文学だなーと思って、改めて、文庫の帯の「芥川賞&河合隼雄物語賞」という文字をじーと眺めていたら、今更ながらあれっと気が付きました。

 芥川賞は、児童文学にまでそのテリトリーを多分広げていないんじゃないか、で、やはり河合隼雄物語賞って、どんな賞?
 で、少しウィキってみました。ウィキペディアにはこう書いてありました。

 河合隼雄物語賞は「人のこころを支えるような物語をつくり出した優れた文芸作品に与えられる。河合隼雄が深く関わっていた児童文学もその対象とする」とされ、(略)

 ……うーん、そんなところにあまりこだわる必要もないのでしょうが、「人のこころを支えるような物語をつくり出した優れた文芸作品」って、何?
 そうじゃない文芸作品って、あるの?
 なんか、丸い卵って言い方とあまり変わらない気がします。
 ただ、「児童文学」について触れていますね。なるほど、やはり児童文学が掠っている作品なのか、と。

 そして私は、2作目と3作目の小説を読みました。
 で、わかりました。この薄い短編集は、芥川賞受賞作の単行本によく見られるタイプの、メインのお話一つと、ちょっと「落ちる」かもしれませんが、筆者がその前後に書いた小説を合わせて一冊にしたものです、と。(えー、ちょっと失礼な書き方になっているかしら。そうならば、申し訳ないのですが。)

 いえ、2作目と3作目もそれなりに面白く、かつ、「あひる」とも大いに関係のあるお話であります。
 連作といってもいいのかなと思いますし、私がかつて読んだ本でいいますと、黒井千次の名作『群棲』が似たニュアンスの短編集(連作)だったように思いました。

 で、とにかくメインは「あひる」だな、と。
 そして、このお話は、不気味な話だな、と。
 で、さかのぼって改めて気が付くのが「芥川賞候補作」という帯の言葉でした。

 なるほど、芥川賞には本作と似たテイストの受賞作が結構あると私は思い出しました。アバウトな類似点になって少し申し訳ないのですが、少し前なら多和田葉子の『犬婿入り』とか、ちょっと近い所では小山田浩子の『穴』とか……。

 日常生活の中に、なんか変なものが出てくるんですね。
 いえ、元は別に変なものでもないんですね。本書でもそうですが、動物やお年寄りなんかです。(この並べ方って、「差別」っぽいですかね。すみません。でも、よーするに、ちょっと自分と異存在のもの、ですかねぇ。)
 で、それらを巡って出来事や登場人物の言動が、少しずつ変、つまり常識的なものから、なんか皮膚感覚的に気持ちの悪いものにずれていくんですね。

 こういった感覚は、いわゆる存在の不安なんでしょうか。
 気がつかなければ気はつかないのですが、一度気がついてしまうと、もー神経症的にどうしようもないもの。
 これは実は、かなり文学の普遍的なテーマでもあります。

 私は上記に多和田葉子以降を挙げてみましたが、このテーマは多分もっとさかのぼれるでしょう。(ざっと思い出すと、「内向の世代」あたりの芥川賞受賞作もいくつかはそんなようだった気がします。)

 ただ本書についていえば、私が最初に感じていた児童文学的な構造、それは私の読みそこないだったのかもしれませんが、それをどう考えたらいいのか、という引っかかりを持ちました。

 というのは、もちろん児童文学などとラベルを張る必要のない(張るべきではない)すぐれた作品もありましょうが、私は少なくない児童文学について、児童を主な読書対象とするゆえの「人間性の簡略化」を感じます。(まー、相変わらずのわたくしの「偏見」なんでしょーねー。)

 本作にも私はちょっとそんな感じを持ちました。
 申し訳ないながら、少し物足りない思いを持ちました。

 さて冒頭で、私は古本屋で見つけたという話を書きましたが、実は筆者について私は全く何も知らなかったわけではありません。
 あ、芥川賞作家が、受賞前に書いたお話だな、と思って、まー、買ったんですね。

 上記に私は、批判的なことばかり書いているように思われるかもしれませんが、この存在の不安という文学の本道に近い所にあるテーマは、決して私は嫌いなものではありません。
 つまり、次にはぜひ、読んでいなかったこの筆者の芥川賞受賞作『むらさきのスカートの女』を読みたいものだと思った次第であります。


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Last updated  2023.07.02 16:40:13
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