≪決別≫
翌日、帰宅後。
居間の机の上に6200元を置いて、時計を見ていた。
PM7:30。
チャイムが鳴った。
来た！
ドアを開けた。
陳社長だ。
「ニイハオ」と私は言った。
「ニイハオ」と陳社長が答えながら部屋に入った。
表情が固い。
・・・何か話そうと思ったけど、何も出てこなかった。
「じゃ、早速…」と私はお金を指差した。
陳社長は「ああ…」とクリアファイルを私に渡した。
6200元の受け取り
委任書 サイン入り 2通
譲渡書 サイン入り 2通
東方花園からの通知のコピー 複数枚。
間違いない。
「じゃ、これ…。6200元あるから」と6200元分の札を渡した。
陳社長は数えた。
終わった…
何とか切り抜けた…
「…ごめんなさいね。私も慎重派だから…」と言いかけた時、
「これ、君が払う」と陳社長は一枚の紙を出した。
何を？
「弁護士の相談料。500元。君が払って」
はぁ？
自分の表情が一変したのが分かった。
私 「…あんた、何言ってるの？弁護士の相談料って…何で私が払うのよ！」
陳 「君が払う」
私 「そんな事、私があんたに頼んだ？あんたが勝手に相談したんでしょう？
私、払いたくないよ！払う理由がないじゃない！？」
陳 「君が払うんだ！」
…一体、何だ、これ？
この人、本気で、今回の一件が私に責任があると思ってるの？
確かに、確かに書類を確認せずサインしたのは私だ、
でも…（考）…
気まずくは終わりたくない。
今までお世話になったし、もしかしたら、これからも友達でいられるかもしれない…
払う義務は全くないと思うけど、譲歩しよう…
深呼吸して、言った。
「…分かったよ。じゃ、私、半分払うよ。それだったら…」言いかけた私の言葉を
「不行！（駄目だ！）」と陳社長がさえぎった。
陳社長の顔を見た。
なんて怖い表情してるの。
これが私のせいだって言うのっっ…！！
カーッと頭に血が昇った。
素早く財布を取って、5枚100元札を数えた。
「好了！（分かったよ！）」
そこまで言うなら、
100元札5枚を
もう、ええわっ！！
陳社長に投げつけながら
「拿去ロ巴！給NI！（持って行きなさいよ！やるわ！）」
叫んでいた。
肩で息をしながら陳社長を見た。
彼は悔しい中に少し笑ったような表情をした。
こいつ・・・！！！笑ってる・・・！！？？
なんて奴・・・！！！
この・・・小聡明・・・！！（小賢しい奴っっ！！）
100元札を拾う陳社長の背中に
「絶交了！（絶交だ！）
再也不想見ＮＩ的面！
（あんたの顔、二度と見たくない！）
出去！（出てけ！）
快出去ー！（早く出てけー！）」
と叫んだ。
お金を拾って立ち上がった陳社長は、今度は本当に悔しそうな顔をして。
黙って背を向けてドアを開け
バターーーン！！！
部屋中に響くくらい大きな音で
ドアを閉めて出て行った。
つづく。
この話はシリーズ物になっています。
宜しければ【26】中国で不動産を買おうとした話（別窓）も御参照下さい＾＾
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500元なんて大した金額ではなかったけれども
謂れのない金を払えと言われて、また今まで我慢していた気持ちも爆発して
最後は感情を抑え切れませんでした。
「カーッとなる」という言葉の意味を初めて理解した気がしました。
「絶交」なんて中国語、使った事がなかったから、
言う前に一瞬「合ってるかな？」と考えました。
「出去」の「去」。
大声で言う時、ウムラウトって難しいな…と思いました。
それと、もう一つ。
100元札5枚投げつけた時。
ヒラヒラと落ちる5枚の紙に
「ショボイな」と思いました・・・
は～あ・・・
