アパートの外は、打って変わって静かで、そして暗かった。
私の所も、そうだったけれども、
竹山さんが住んでいたアパートの敷地内も暗かった。
街灯は最近ついたものの、明度が足りないのか日本に比べれば見えにくい。
足元もデコボコしているし
うっかりしていると引っくり返ってしまう。
最初は気付かなかったけれども
サクサク歩いた後に、奥さんが後ろの方にいるのが見えて。
慌てて駆け戻った^^;;
奥さんは歩くのがやっとのようだったから
肩と背中に手をあてて、介添えをするように歩いた。
歩きながら
「寒くないですか?」
「足元が悪いですから、御気をつけて」
声をかけながら。
奥さんは眉をしかめながら頷き、足元を慎重に運んでいた。
細い肩を支えながら、ふと
『可哀想に・・・』
と思った。
こんな中国くんだりまで来て、
何があったのか知らないけれども、離婚だ何だのの話・・・
恐らくだが、奥さんは、今回で何かを見極める為に、わざわざ中国に来たのではないか。
何年も離れて暮らして
心細い時に、頼れなくて。
だから、今後もやっていけるか、確認しに来たような気がする。
アパートの中で目を血走らせて怒鳴っていた様子を思い出した。
離婚する覚悟で来たなら、あんなヒステリックにはならんだろ。
きっと(いや絶対)竹山さんがしょ~もない鈍感な事をして、奥さんが切れた。。
その内、興奮しすぎて、一体何で怒っているのかも分からなくなって
あんな状態になった・・・
のかもしれない。
一方の私。
何の因果か、こんなややこしい場に呼ばれてしまって。
私に何を、どないせぇっちゅうの~!?(汗)
と思ったけれども。
来てしまった以上、引っ込みつかんようになったしぃ(汗)
とにかく第三者として、奥さんの話を聞いてやる事が一番のような気がした。
竹山さんから離して、冷静になってもらって、奥さんの真意を確かめる。
その上で、何なり言おう。
まずは奥さんのウップンを晴らさねば。
幸い、話して発散するタイプのようだし。
竹山さんの悪口でも何でも、言いたいだけ言ってもらおう。
こうして外に連れ出して、場所を変えるだけでも気分転換になるはずだ。
**********************************************
交差点に出た。
タクシーがスピードを出して通り過ぎる。奥さんは怯えるように車を見つめていた。
信号が青になるのを待って
「さ、渡りましょう^^」
と肩を支えながら渡った。
本音を話してもらうには、私に対して安心感を持ってもらわねば。
私が奥さんに誠意を持っている、という安心感を。
もしかしたら今、偽善者みたいな顔つきになっているかもしれないけれども。
誠意を感じてもらわねば。
喫茶店が見えた。
「あそこです^^」
2階建てのファミレスタイプの喫茶店。
私のいきつけの場所。言わば私のテリトリー。
自分のテリトリーに相手を連れてきた方が、心理的に優位に立てる。
ここに連れて来たのには、その意味もあった。
中に入った。
「幾位?(何名様?)」とエプロンをつけた服務員が近寄ってきた。
「両位(2人)」と私。(^^)V
奥さんはカバンを抱きしめ、店員を上目遣いに見ていた。
奥さん、外に出たら、やっぱりちょっと萎縮してるな・・・
奥さんに「2階に行きますか?^^」と聞いた。
奥さんが「1階で」と答えたので、入り口から少し奥まった席に座った。
「私、カプチーノにしますけれど、奥さん何にします?^^」
「・・・何にしようかしら・・・?」
「え~っとですね、コーヒーならブルマン、アメリカン、エスプレッソと日本と同じように
ありますし、ドリンクならフレッシュジュースが・・・」
と言った後で、竹山夫妻が「昨夜から何も食べていない」と聞いた事を思い出した。
「・・・お食事如何ですか?昨夜から何も食べていないでしょう?
定食もあるし、麺類でも何でもありますよ?^^」
「お腹空いていないし・・・」
「おかゆはどうですか?中国のおかゆは美味しいですよ。
軽いし、お腹にもたれないですから^^」
何か食べささな、いかん、と思った。
お腹空いていたり、眠かったりすると、それだけでイライラする。
冷静にさせるには、何とか食べさせないと。
「じゃあ~・・・アイスクリームで」
結局、奥さんはフルーツサンデーを頼んだ。
まあ、これでも、何も食べないよりはマシだ。。。
**********************************************
取り敢えず、ここまでは何とかできた。
そして・・・
ここからが本番。
「離婚したい」という上司の奥さん相手に、どう対応するか。
未体験ネゴやわ~(汗)
でも
仕事のつもりで、
やってやろうじゃないの・・・(決意)
つづく。
←是非1票お願いします!(別窓)
←こちらも是非!非常感謝!(別窓)
←御支持お願いします^^(別窓)
この話は【九】単身駐在上司の奥さんの続きです。宜しければ、どうぞ。別窓です。
明けましておめでとうございます。
07年、初っ端、これから始めます^^;;
話は、いよいよ佳境に入ったって所でしょうか・・・
今年も宜しくお願い申し上げます^^