スーツにネクタイ姿の男性が、手足を縛られて
向かいの席の女性が泣きながら男性の足を叩いている。
あまりに異様な光景に、思わず目を逸らしました。
行商の兄ちゃんの表情をチラと探ると
窓の外を見て無反応だったので、
私も気にしないでおこうと平静を装いました。
しかし、また。
「マリア~!!」
男性の絶叫。
その後に「エイ、ニ~!」と女性の声。
何人かの旅客が振り返ったのは感じましたが。
行商の兄ちゃんは、またチラと一瞬目をやっただけで
無表情だったので
私も反応するのはやめておこうと。。でも
「エリザベス~!!アイラブユー!!」
・・・何なんだ、アイラブユ~ってぇ!!(@@;
更に多くの旅客の視線が一斉に動いたのを感じて、
私も一緒に振り返りました。
男性は奇声を発しながら、既に椅子に座れてもおらず
手足を動かして暴れており。
しかし、その表情や動きを見て、やっと分かりました。
(精神を)病んでる人か・・・(・.・;
男性は色が浅黒くて、体格は並程度。
まだ若く見えました。20代前半・・・?
向かいの席の女性は黒っぽい服装でスカートを履いていて
周りの目を少し気にしていました。
また男性の様子にやりきれない風に、
懇願するように、力なく足を叩いては、ハンカチを目に当てていました。
何となく、2人は姉と弟だと感じました。
その向かい合ったBOX席にはもう二人、
初老の女性と中年の男性がいて、時々暴れる男性を制止していました。
恐らく親や親戚だろうと感じました。
彼らの身なりや物腰から、周囲の
麻袋を持ち込んでいる乗客とは違うと感じました。
こんな状態の中で「マリア」「エリザベス」「アイラブユー」と
英語を叫ぶ男性はきっとインテリなのだろうと思い。
恐らく周囲の3人も、それなりの家の人なのだろうと感じ。
恐らく病院かどこかへ連れていくのだろうと思いましたが。
でもそれなりの身なりや物腰と、
手足を縛る、という荒々しい状況のギャップ。
そして、そんな彼を衆目に晒(さら)さねばならない列車で、
しかも硬座(一番安い)で移動せねばならない事情は
一体何なんだろうかと。
日本なら、自分の知っている範囲で何らかの推測を組み立てられますが
ここ中国では恐らく事情が違うのだろうと、
推測も落ち着きどころがありませんでした。
この時多分、私の顔は多少眉間にシワが寄っていて
「何なんだ・・・(~。~;」という
「困惑」等の表情が浮かんでいたと思うのですが、
周囲の中国人には
そう言った表情が見受けられない事にも
「困惑」を感じました。
でも、そうやって無反応でいる事が
あの家族にとって救いになっているような気がしたり。
でも、その無反応や無表情には、何となくですが
極端な状況に慣れすぎたような「麻痺」性を感じました。
ただ、込み合った列車の中で
この家族の周囲だけは、妙に空間が空いていました。
(皆、近寄らない)
この空間の意味・・・
周囲の人の表情に「恐怖」や「困惑」等は一切感じない中の
この空間の意味は、何なのだろう・・・・・。
・・・本能?
何かが私の背中に触れて。
振り返ると、行商の兄ちゃんでした。
彼は、小声で
「不要看(見るな)」
と心配そうに私に言いました。
つづく。
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16年前の中国列車旅の記憶です。
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