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カテゴリ:お兄さん
2年ほど前だろうか、友達とハリハリ鍋(クジラ)を食べに行った。
私も友達も初めてだったので、ややテンション上げ気味で店に向かっていたのだが、道中とても気になる人を見かけた。 私などは、ハリハリ鍋を後回しにして彼を追けたい…とまで思ってしまったほどだ。 その人は地下鉄の駅にいた。 年の頃は20代前半。 洋服を収納する、四角い透明のプラスチックケースを持っていた。 両手で抱えなければならないようなサイズのものを…。 彼は電車が来るわずかな時間も惜しんで作業をしていた。 プラスチックケースを机に、漫画を描いていたのだ! 誰がゲ○したかもわからないような地面に正座し、服が汚れることも厭わず、一心にペンを動かしている青年。 その画力は思った以上で、とても素人のものとは思えない。 素人の私が言うのもなんだが、充分お金になるレベルとジャッジした。 彼に心を奪われているのは、もはや私だけではない。 友達はもちろん、通りすがりの人たちもチラチラ彼の仕事ぶりを見ている。 ちなみに私はチラ見などしない。 隣に立ってガン見。 「どんだけ切羽詰まってるンやろ…」 彼から発せられる「焦り」のオーラは尋常ではない。 どれだけガン見したところで、今の彼に気にする余裕など、1ミリもあるはずがなさそうだ。 そうこうしている間に電車が来た。 彼は漫画道具一式を抱え乗車、そのまま電車の中でも地べたに座り込んで、作業を再開させた。 揺れる電車の中で…。 電車が私達の降りる駅になっても、漫画男は下車しなかった。 かなり追跡するか迷ったが、ハリハリ鍋の予約時間が迫っていたため、断腸の思いで降車した。 プシュ~と閉じた扉の向こうでは、まだ一心不乱にペンを走らせる彼がいた。 やっぱり尾行すればよかった…。 一応私達の中では、プロならもう少しマシな扱いを受けているはずだ、との見解から、同人誌などに載せる原稿では、と結論づけた。 それにしても、あんな過酷な環境で描けるにも関わらず、机の上でも作業が間に合わなかったなんて、一体彼に何があったのだろう…。 デリーター Vol.5まんがの描き方編 501-5005(a) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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