スズキ・スイフトに乗ってきた。
みなさん、こんにちは。 スズキの新型車、スイフトに乗ってきました。自分の備忘録的意味合いも兼ねて、レポートいたします。 公式に試乗車として用意されていたのはRSとRStグレードだけだったんですが、少し早めに到着したら、広報さんが気を利かせてくれて、「XLグレードも1台あるんですけど、まだ20分ぐらいあるから乗りませんか?」と言ってくださいまして、チョイ乗りさせていただきました。 ちなみに会場は幕張のホテルニューオータニで、コースはその周辺。海沿いの3車線バイパスで60km/h前後までの性能を試し、検見川浜の市街地で低速域の乗り心地や視界などをチェックしました。基本的に交通量は少なく流れは良いので、燃費には有利な条件ではあります。 発進しての第一印象は、「おお、やっぱ軽いわ」という感じ。前作から120kg軽量化されており、同クラスのヴィッツやデミオより100〜150kg軽いんですよね。CVTは基本的に燃費優先の制御なので、加速時にも低回転を維持したがるんですけど、クルマが軽いので、そのままスルスルっと加速していきます。ブレーキも最初の食いつき感が良く、欧州車的フィーリングなのですが、後で聞いたら「軽量化した分、1サイズ小さくしたんですよ」ということでした。でも、ネガが出るどころか、お釣りが来ている感じです。 60km/hぐらいの直進性は申し分なく、ハンドルに手を添えているだけでまっすぐ走ります。中立付近の「作ったような」抵抗感もなく自然です。騒音振動性能は「ほぼ前作維持」ということなのですが、風切り音は小さくなっているような感じでした。その代わり、空調の吹き出し音が耳につきます(^^;。あとは、荒れた路面でのロードノイズがちょっと大きい印象はありました。まあそのへんは、軽量化とトレードオフですからねぇ。まあBセグ車ですから、贅沢は言えません。 クルマは軽くても、操舵力はきちんと残してあり、前輪のグリップ状態はわかりやすいです。操舵応答は過敏すぎず遅すぎもせず、自然で非常に乗りやすいです。乗り心地はそこそこ引き締まった感じですが、30km/hぐらい出てしまえば、むしろ落ち着きがあって好ましいです。欧州車風でありながら、日本の速度域にうまく合わせている感じです。 ボディの剛性もしっかりしています。欧州車のような「鎧のような堅牢さ」ではないのですが、操安性を邪魔するような変位は極小で、旋回中に路面の荒れたところを通過しても、進路を乱されて驚くようなことはありません。 後席の乗降性も改善されましたし、実用コンパクトカーとしては、お勧めできるモデルですね。フィットのような多用途性はありませんし、デミオのようなプレミアム感はありませんが(値段が違いますから)、運転の質感がわかるダウンサイザーでも満足できるクルマではないかと思います。 で、燃費のほうですが、外気温2℃の冷間スタートという悪条件で、18.1km/Lでした。モード燃費が24.0km/Lなので、カバー率は約75%。気温を考えればまずまず納得の数字です。アイドルストップも付いていないですしね。 2台目に乗ったのは、正式に試乗車として用意された1.2LのRSグレードです。トランスミッションはCVTで、外気温8℃、暖気完了からのスタートです(以下3台はほぼ同じ条件)。 XLとの違いは、マイルドハイブリッドシステム&アイドルストップが付いていることと、サスダンパー(ショックアブソーバー)の減衰力が高めの設定になっていること(バネやタイヤは同じ)ぐらいで、動力性能の印象はXLと変わりません。減速時には回生ブレーキが強めに働くため、小さなGでていねいに減速して行くと、回生が終わった瞬間に微妙な「抜け感」がありますが、それを感じられるドライバーなら、ちゃんとコントロールできるレベルです。ほとんどの人は気づかないんじゃないかな? アイドルストップからの再始動はACGを使いますから、音もショックもなく、なめらかにかかります。ただしアイドルストップ中は音がしなくなるので、空調の吹き出し音が、余計目立って感じられました(^^;。アイドルストップ中は、自動的に風量を半分ぐらいまで落とすようにしたらいいんじゃないでしょうか。 ダンパーは専用のチューニングになっていますが、市街地を走っている範疇では、恩恵はほとんど感じられません。というより、ノーマルの足が十分、いいんですよね。峠道のように、左右に切り返すようなシーンになると、RSの優位性が出てくると思われますが、普通の人がCVTで制限速度よりちょっぴりスピードを出す程度なら、ノーマルの足で十分です。硬さを感じる速度域が、ノーマルの足が30km/hぐらいまでであるのに対し、RSの足は50km/hぐらいになりますね。 燃費のほうは、21.6km/Lとなりました。走行距離がXLの2倍ぐらいあり、暖気スタートという有利な条件だったのですが、モード燃費のカバー率は約79%となりました。 さて、試乗会場に戻ったら、少し時間に余裕がありすぎたのですが、広報さんがここでも気を回してくださいまして、「実は1台だけRSのMT車があって、ちょうど戻って来たところなんですけど乗ってみます?」と言ってくれたので、二つ返事で乗せてもらいました。車重は870kg。最初に乗ったXLのノーマル車より、さらに10kg軽いです。 MTなので、エンジンそのものの実力が図れるのですが、低速からよく粘りますね。5速1,100rpm(約42km/h)からでも、ゆっくりした加速なら受け付けます。1,500rpmぐらいまわれば普通に加速していくのですが、3速以上だと2,000rpmぐらいでシフトアップするとちょうどそのくらいになるので、2,000rpmぐらいでポンポンシフトアップしても、まったくストレスなく走ります。一般道だったので、加速は3速で60km/h+αまでしか試していませんが、クルマの軽さはここでも生きますね。レブリミットは6,500rpmと平凡ですが、そこまで使い切って楽しむことのできるエンジンです。 不満があるとすれば、クラッチが少し軽過ぎて頼りないことと、半クラッチが長くてエンゲージがわかりにくいこと、回転数によっては2速が渋かったことでしょうか。クラッチペダルのレバー比はもう少し落として、踏面ももう少し大きくしっかりしたものが欲しいところですが、多分これ、欧州仕様のノーマル車と同じものなんでしょうね。慣れちゃえば気にならなくなるのかな? さて、そして燃費なのですが、なんと23.5km/L。ハイブリッドでもなくアイドルストップもないのに、RSハイブリッドを上回りました。モード燃費のカバー率も104%と優秀です。さすが歯車の伝達効率ですね(なぜそういうことが起こるのかはこちら)。MTなら誤発進もしませんから、高齢の方はMTに戻るのも良いのではないでしょうか。スイフトのMT車、楽しいですし(*^^*)。 えーと、長くなっておりますが、最後に乗ったのが1.0L3気筒ターボのRStグレードです。正直言って、このグレードの存在は微妙ですね(^^;;。 いや性能そのものは悪くないんですよ。ターボラグはほとんど感じないし、低速から力は出ているし、車重が重くなったぶん、乗り出してすぐ「お、微妙に重厚」って思えるし。 問題になるのは、3気筒特有の振動なんですね。6速ATがワイドレシオで、なおかつ燃費を取りに行く制御をするため、巡航中は1,500回転ぐらいを使うことが多いのですが、ちょうどそのあたりの回転域で、お腹に響く周波数の振動が出るんです。お昼前でお腹が空いていたので、よけいはっきり感じました(^^;。 しかも、アイドルストップが付いていないので、アイドル振動も現代のクルマとしてはちょっと考えてしまうレベルです。せめてアイドルストップが付いていれば、ずいぶん印象も変わったのではないかと思うのですが(そういう予定はないらしい)。 ギヤレシオがワイドなのも、少し気になるところです。5速1,500rpmで約57km/h、6速1,500rpmで70km/hぐらいのハイレシオなので、市街地走行ではまず6速には入りません。ですから燃費も、バイパスの巡行になるとぐんぐん伸びるのに、市街地に入ると目に見えて落ちていきます。 ということで、欧州の平野部のように、走り出したら高速で止まらずに走り続けられる環境にはマッチしても、日本の市街地走行にはミスマッチなキャラクターであると感じました(もちろん日本でも、郊外在住で速度域が高いとか、高速のロングドライブが主用途なんていう人には向いていますよ)。 ちなみに燃費は20.4km/Lと、モード燃費のカバー率は約102%と優秀でしたが、バイパス巡航中は22km/L台で、会場に戻る市街地でみるみる落ちていきました(^^;。 最後にお勧めグレードですが、XLの5MT車が一押しですね。ハイブリッドより約16万円安いし、実用燃費では上回ることもありそうだし。高齢の方なら、ボケ防止の一環でMTに乗るのも悪くないと思いますよ。