梅木水晶の日常

私は、一人で外食をしたり、観光地に出掛けたり、
街へ買い物に出たりするのは苦にならない方です。

男と一緒に暮らす前、私は電車を乗り継ぎ、
薔薇が美しく咲き誇る事で有名な公園へ出掛けました。

当時私が持っていた携帯電話は、
充電が十分にされない携帯電話で、
前日の夜から翌朝までしっかり充電しても、
100％の充電がされませんでした。
電池パックの交換が必要だったのでしょう。

私が男に、
「明日、薔薇公園に薔薇を見に行ってくるね。今、見頃らしい」と言うと、
男は、私が誰か他の男とやましい事をしに行くのではないかととても疑っており、
「携帯電話の充電がなくなったのをいい事に、
　僕に内緒で他の男と何かやましい事をする訳じゃないよね？」
と聞くのでした。

私が「違うよ。」と答えると、
「僕が君に電話をかけた時に、君がすぐ電話に出れるように、
　出先に、携帯電話の充電コードを持って行くといいんじゃない。
　そうすれば、コードの差し込み口がある場所なら、
　いつでも喋る事が出来るでしょ。
　１時間に１回ずつでも、交代で電話をかけあうようにすればいい。」
そんな提案をするのでした。

私は、美しい薔薇を鑑賞しに、
薔薇公園まで出掛けたはずなのに、
何故か定期的にかかってくる男からの電話のせいで、
薔薇公園の公衆トイレの中で、
公衆トイレに設置してあった暖房便座のコードを抜き、
持ってきた携帯電話の充電コードを差し込み、
洋式の便座に座ったまま、30分以上男と電話で喋るという、
おかしな事になってしまっていました。

私は薔薇公園に何をしに行ったのでしょうか。

今考えると、男は（自称）ＳＰという仕事をしていたものの、
割といつでも私と電話で３０分以上喋る事が出来たり、
何度画面をスクロールしても読み終われないような
長い長いメールを送ってきたりしていたので、
今冷静に考えると、
本当に仕事をしていたのだろうかという疑問さえ生まれて来ました。

男は本当は働いていなかったのだとしたら、
ＳＮＳで知り合った私の、
「正社員」
「一人暮らし」
「夏・冬の賞与あり」の私からの、
「犬ちゃんと一緒に住めたら楽しいだろうな～」発言は、
まさに渡りに舟といった感じだったのではないでしょうか。

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