梅木水晶の日常

私は、仕事の休みの日を利用して、
家のベッドで１人眠る男に、
「子宮けいがんの検診に行ってくるね」と言い残し、
検診に出掛けました。
検診が終わった頃に、親戚のおばから電話がありました。

「水晶、今どこにいるの？」
「保健センターだよ。さっき検診終わった。」
「今からすぐ、こっち（山形）に帰ってこれる？」
「今からって、今すぐには無理だよ。笑」
「お金がないの？」
「いや、お金はある。カードもあるから切符は買える。」
「じゃあすぐ帰っておいで。」
「待って。会社に上司がいると思うから、ちょっと一言、言ってくる。」

私は「ちょっと一言」で簡単に会社が辞めれるもんなんかいな、
という思いを抱きながらも、
皆がいつもと変わらずに働いている会社に向かいました。

当時の私の上司であった小林さんは、
売場ではなく、店舗後方のバックルームにいました。

休日に、売場ではなく、バックルームに突如現れた私の姿を見ると、
「おう、どうしたんだよ。」と言いました。

私は、
「大変急で申し訳ないんですけど…、
　小林さんも知ってる、私が一緒に住んでる、ヒモの犬、いるじゃないですか…。
　その話を親戚のおばにしたら、
　『そんな男の所からは、すぐに逃げて来い』って…。
　なので、本当に急で申し訳ないんですけど、
　今日の今日で会社を辞められるものなのかな、と思って、
　小林さんの意見を聞きに来たんです…。」

そう言うと小林さんは、
「…お前の意志としてはどうなの？」と聞きました。

私は、
「私としては、売場の皆に迷惑をかけるのも嫌なので、
　仕事は辞めたくありません。
「でも、男とは別れたいんだな。」
「はい。」
「お前としては、仕事は辞めずに、男とは別れたい。」
「はい。」
「両方は手に入らんぞ。」

そんなやりとりをしていた頃、
実家の母から電話がありました。
おばから母に連絡が行ったのでしょう。
私は電話に出ました。

母は、私に仕事を辞める気がないのを悟ったのか、
私と話していてもらちが明かないと思ったのか、
隣にいた上司の小林さんに、電話を変わるように言いました。

「今すぐに娘を辞めさせて、こちらに返して下さい。」
といった内容の事を、小林さんに言ったようでした。

小林さんは、私の母の物凄い剣幕に圧倒されたようで、
「…お前の母ちゃん、俺が何か言った所で聞く耳持たねえようだから、
　とりあえず、総務で退職手続きしてこい…。」と言われました。
私の母との電話を切った後、
小林さんは、作業場に戻りました。

私は、総務で退職の為の手続きの書類を何種類か書き、
印鑑や添付書類が必要な物などは、
後日郵送で送るので、という事で、
退職の手続きを進めました。

その間、私の携帯電話は、男からの着信で鳴りっぱなしでした。
親戚のおばや、実家の母と携帯電話で話してた事もあり、
充電がもうあまりありません。

私が退職の為の手続きの書類を書いている間に、
上司の小林さんの作業はひと段落し、
小林さんは白衣を脱ぎ、
「名古屋駅まで送ってってやる。」と言いました。

名古屋駅に着き、小林さんは、新幹線改札口で、
私の実家の母に電話をし、
「今から娘さんを東京行きの新幹線に乗せますので、
　明日には山形の方に到着すると思います。」と、
電話をかけて下さいました。

私はもう、男のいる、愛知に来る事はないでしょう。


ヒモ　働かない　同棲　同居　内縁関係　暮らす　暮らし　精神的ＤＶ　ドメスティックバイオレンス　ストーカー　束縛　逃げ　配偶者　彼氏　恋人　我慢　耐える　耐えられない　暴力　警察　相談　ミクシ　ｍｉｘｉ　フェイスブック　ｆａｃｅｂｏｏｋ