この寒さに手のひらをこすりあわせて、
彼は白い息を吐きかけていた。
「このままふったらつもるかな。」
舞い降りてくる白い雪を見上げて、
少し不安そうにそう言う。
まるでまた会えるようだと思った。
穏やかにした別れ話は、
そのまま静かな流れで、
「送っていくよ。」
なんて俺も普通の態度をとっている。
なかなかこないバスを待ちながら、
濡れていく地面をぼんやりと眺めていた。
どうしよう。
このままでは本当に彼は行ってしまう。
まったく俺らしくはないけれど、
行かないでとお願いしてみようか。
強引に肩をつかんで、
もう一度部屋へ帰ろうと。
「元気でね。」
道路のほうを向いたままで言う、
彼の背中を少し上から眺めている俺は、
なかなか決心ができず、吹き付ける風にただ身を縮めていた。