「リチャード・ニクソンの暗殺を企てた男」
まず、ショーン・ぺンが巧い!素晴らしい。民間機をハイジャックしてホワイトハウスに追撃する。まさに「9.11」をイメージしてしまう内容だけれど30年前の実話がベース。主人公、サム・ビックは、すごく孤独で繊細な人間。生き方が不器用といってしまえばそれまでだけれど、あまりに自分の中の常識ばかり先行してしまっていて、まわりが見えて無い。自分を理解して欲しい、こんなに行動してるのに、何故何故何故。カーネギーの経営自己啓発のビデオや本をすすめる儲け主義の社長だって、本当は15%引きでうっても儲かるのに客にはこれだと赤字なんですといってる兄だって、決して間違ってない。でも彼は我慢できない。会社で雇われるのが奴隷だと感じてしまったら軌道修正するのは困難なのだから。この部分だけでいえば、どこか共感してしまう人がいるかもしれない。だから洒落にならないといえば洒落にならない。自分がみえてなくて、他人の批判ばかりしている、結局他人にふりまわされている心理状況は尋常じゃない。別居してる最愛の妻(ナオミワッツ)も独立して共同経営者にと思っている友人で黒人のボニー(ドンチードル)も、会社の社長だって兄だってとても現実的に描かれているし、受け入れられない何%かと受け入れられない何%、“おまえそれは違うんだよ”感じている人間を描く洞察力が優れてる。ショーンペンが巧いと冒頭で書いたけれど、出演者皆巧い。ストーリーも全くあきず無駄のない完成度の高い作品だなと思う。自分でも繊細で弱い人間だということはよくわかってる。でもこのまま人生に負けて終わりたく無い、、、、、そんな想いをもった歴史に残る為の行動は、あまりにも過激で突発的で間違えたこと。でもこうして映画になったとすれば、「歴史に残る行動」という彼の思いは達成されてしまったことになるけど。想像してたよりとっても面白かった。そして無性に、若きデニーロの「タクシードライバー」を見直してみたくなったかな。「リチャード・ニクソンの暗殺を企てた男」