生きる
今日帰宅したら、家にいるはずの妹の姿が見えなかった。母によると、テンションが極めて低く、部屋にいるとのこと。元々気分の変動の激しい人なので、いつものことかと思っていたら今日は事情が違っていた。何でも、彼女の高校のときのクラスメイトが交通事故で亡くなったらしい。誰かが亡くなると、私にはいつも思い出す思い出がある。私が中学2年生だった時のこと。小学校からずっと一緒だった同級生の男の子が、交通事故で亡くなった。いつものように家を出て学校へ行こうとしていた私は朝刊を見ていた父によりその事実を知らされた。ちょうどその日は2学期の期末テストの日で、軽く混乱状態になりながら受けたテストは、かつてないほど悪い出来だった。人が死ぬということ。それまでもお通夜やお葬式に出席したことはあったしもちろん「人はみないずれ死ぬ」ということは頭では理解していたけれど、何となく自分とは遠いことのような気がしていた。まだ14歳だった私は、「死」を自分のこととして考えたことがなかった。同級生の彼が亡くなって、私は初めて自分と同い年の人間の死を知った。彼が亡くなって、彼のご両親やおじいさんおばあさんの生活は大きく変わってしまって、私も友人の一人を失って強くショックを受けた。それでもテレビはいつもの番組を流していたし、社会は何一つ変わらずに時を刻んでいた。そのことが何だか恨めしかった。あれからかなりの月日が過ぎて、今わかるのは、人の命はあまりにもあっさりと消えうるものだということ。自分が死ぬことも怖いけれど、自分に近い人がいなくなってしまうことの方がもっと怖い。私がこの世から去るその日まで、近しい人たちには生きていて欲しい。時々そんなことを考える。20歳で亡くなった妹の同級生のご冥福をお祈りします。