メチル化カテキンの豊富な品種について考えてみたいと思います。
中国茶ブログらしく、中国・台湾の研究もご紹介しつつ。
中国、台湾の両国でも研究は行っていますが、どちらかというと「日本で随分熱心にやっているみたいだから、うちもやっとくか」的なノリを感じます。
花粉症が国民的な症例になっている日本とは、正直、かなりの温度差がありますね。
<日本のエースは、やはり「べにふうき」>
比較をする意味でも、まずは日本の品種から。
日本での研究によれば、メチル化カテキンは紅茶系品種である「べにほまれ」とその血をひく「べにふじ」「べにふうき」に多く含まれることが分かっています。
その中でも、「べにほまれ」の含有量が0.7%程度であるのに対し、「べにふうき」は1.5%程度と際立って高く、やはり日本のエースは「べにふうき」ではないかと思われます。
ただ、同じ「べにふうき」であっても、収穫時期や使用される葉の部位によって含有量が0.8%~1.5%の幅があるなど、成分は一定ではありません。
さらに最近市販されているべにふうき緑茶では、2%越えのものも見かけます。
最近は検査機関がメチル化カテキン量の測定サービスを行うようになっており、一部のお店では含有量を明記した商品を販売したりしています。
より含有量にこだわりたい方は、そうした商品を選ぶのも良いかと思います。
<中国の研究>
多数の品種を抱える中国はどうでしょうか。
百度文庫を巡って、3つほど論文を読んでみました。
参考になるのは、このへんでしょうか。
http://wenku.baidu.com/view/ad49164669eae009581bec42.html
で、これらの論文のポイントを抜き出すと以下の通りです。
・秋茶、冬茶の方が、メチル化カテキンの含有量が多い
・新芽よりも4葉、5葉の方が多い
・緑茶、烏龍茶に加工するのが好ましい。緑茶に加工すると生葉よりやや増加、烏龍は微減。紅茶、黒茶にすると消失してしまう。
・烏龍茶は、なぜか萎凋すると生葉よりも含有量が増える。が、殺青すると下がる。
・殺青の方法でも違っていて、一番効率が良いのはマイクロウェーブ殺青。続いて釜炒り、蒸製。
・焙煎の温度は90度までにすべき。120度になると、減少が見られる。
・調査対象の広東品種30種のうち、メチル化カテキンが含まれていたのは30種。
・調査対象の福建品種42種のうち、メチル化カテキンが含まれていたのは35種。
・調査対象の雲南品種102種のうち、メチル化カテキンが含まれていたのは9種。
・含有量0.8%越えは広東品種9種、福建品種5種、雲南品種は1種。
・メチル化カテキンが1%以上含まれる品種は6品種。最高は1.431%。
・0.8%~1%は14品種。
・0.8%以下は74品種
具体的に「この品種が良い」というものは分からないのですが(それは公開しないらしい)、渋みが強くていかにも多く含まれていそうな雲南品種には、実はほとんど含まれていないようです。
むしろ、広東品種の優秀さと福建品種の優秀さが目立ちます。
広東品種は、おそらく単ソウ系。
中国茶の専門家の方も割とノーマークの存在だったと思います。
独特の渋みの中にはメチル化カテキンの渋みも含まれていたようです。
福建省の品種は安渓の系統と武夷の系統があります。
元々、品種的に台湾と近い地域でもあり、当初、凍頂烏龍茶が持ち上げられたのも納得できます。
ただ、0.8%越えは広東品種に比べると比較的少ない印象です。
いずれにしても中国では、「べにふうき」の含有量1.5%に届く品種は、今のところ見つかっていないようです。
<台湾の研究>
台湾でも2007年に茶業改良場で研究が行われたようです。
色々な研究報告に混じって、研究の抜粋があったので、それを読んでみました。
http://www.coa.gov.tw/rded96/doc/963015.pdf(PDFファイル)
・台東分場の品種園にある122種類を緑茶にして実験してみた
・結果、平均は0.45%で、0.8%以上は16種あった。
・最高は1.63%。
・メチル化カテキンの含有量が高い品種の多くは半発酵茶向きの品種だった。
とのことです。
こちらも品種名までは分かりませんが、1.63%の品種があるのが気になります。
ただ、台湾のお茶は基本、烏龍茶に製茶されてしまいますので、含有量の若干の低下は避けられません。
なので、製茶後のお茶における含有量で比べると「べにふうき」と良い勝負になるかならないか程度になってしまいそうです。
こうして3カ国の品種を比較してみると、日本のエースである「べにふうき」は、メチル化カテキンの含有量という視点では、抜けた存在のようです。
国産でこれだけ強いのがあると、中国や台湾の品種を「花粉症対策のために」と積極的に選択するメリットは、正直あまり感じられません。
もっとも、この調査では摘採時期や部位など、条件が十分ではなかったケースも考えられます。
もし、日本で中国茶・台湾茶を「花粉症に効果が期待できそう」という売り方をしたいのであれば、輸入業者さんなどが日本の検査機関でメチル化カテキン量を測定し、それをエビデンス(証拠)として提示する必要があると思います。
後述しますが、「べにふうき」緑茶の中には、メチル化カテキンの含有量を自主的に専門機関で検査し、含有量を明記して販売しているものもあります。
そういうお茶がある中で、他人の研究成果を適当に引用して販売を行うスタイルは、根拠に乏しいと言わざるを得ません。
最近、専門検査機関のメチル化カテキン測定サービスは数万円程度で受けられます。
もし、花粉症対策をキャッチコピーで売るのであれば、そのくらいのコストは当然払うべきでしょう、と私は思います。
確かなエビデンスも無いのに「健康に良い」をアピールする売り方は、胡散臭いだけだと思うんですけどね。
#効能で売らなければ、そんな必要は無いんですが。
・・・というわけで、中国茶ブログにあるまじき結論ではありますが、
日本でメチル化カテキンを採るなら、今のところ、べにふうき緑茶が一番効率良さそう
という結論になってしまいました(^^;)
続く。
<目次>
(1)凍頂烏龍茶騒動を振り返る
(2)カテキンの話
(3)メチル化カテキンの話
(4)中国・台湾の研究
(5)淹れ方・飲み方は?
(6)実際に試してみた(飲料&飴編)
(7)実際に試してみた(粉末&リーフ編)
(8)まとめ
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そんなオチか(^^;)