「墨攻」「後宮小説」
2022年秋から年末にかけて、酒見賢一さんの2冊を読んだ。このところ、つきそいで病院の待合室に足止めされる時間が多かったので、そこそこのペースで。どちらも初読。平成の初めの頃に、酒見さんの本を4冊購入して、2冊だけ読んで、ツンドクになっていた残りの2冊。『墨攻』【中古】 墨攻 / 酒見 賢一 / 新潮社 [文庫]【メール便送料無料】墨攻は森秀樹さんがマンガ化したものに耽っていたいたこともあり、そちらの完結までは読まずにおくつもりだった。先がみえたら残念だろうと。のだが、そのうちに「絵の少ない本を読めない時期」が始まってしまい、数年に及ぶまんが連載完了時には手に取ることもなく、、、。マンガ版は原作の内容の増補拡大版で、まんが版のあとで読んでも概要・要約版にしか見えないのではないかと。で、十数年の思いこみを引きずりつつ、読み始めました。マンガ版での森さんの画風は、描き込みが効いていて重厚。この画のイメージから、原作の文面は中島敦さんのように熟語漢字が各所に配された黒々としたものを想定していたのですが、はずれ。軽快な読中感は、サラリーマン金太郎か島耕作のよう。ダメ上司にへこたれない意気揚々とした一面がある物語でした。『後宮小説』後宮小説 (新潮文庫 さー25-1 新潮文庫) [ 酒見 賢一 ]たしか、日本ファンタジー大賞の第1回大賞受賞作。アニメ映画も作成された。本格長編なのだとの先入観。平成の一桁に早稲田駅のAYUMIbooksで購入して、30年くらい寝かせていたが、本が熟成するわけはない。が、読み手の自分は、グリーンデスティニーやキングダムを観たりで、バックグラウンドは豊かに。当時にこんな用語があったかは不確かだが、「ヤングアダルト」で「ライトノベル」な学園物で、中世の終わりかけの中国らしき国が舞台。いなかから連れてこられた勉強嫌いな女の子が、パズーのごとく駆け巡る。しっかり、お父さん目線で応援しました。が、10代のうちに読んだ方が良い本です。大人にむけて書かかれていない(と想像する)ので、単純でいられることのの解放感がすばらしい。昭和の終わりのトンネルをぬけて、「元気」の二文字で世間を渡れた時代があのをおもいだしました。「蛇足」2冊に共通するのは延々を感じるあとがき。自分はあとがきを先に読むことが多く、これは大事なポイントを読み逃さないための予防策と言い訳しています。が、酒見さんのあとがきはとにかく永く、大事なポイントも教えてくれない。吉里吉里人で鍛えられていなかったら、本文に入る前に逃亡していたかもしれない。あとがきは、やっぱりあとに読むものです。