743336 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

七転八べぃ≒(七転八倒+七転八起)÷2 ≒あさ・がお

七転八べぃ≒(七転八倒+七転八起)÷2 ≒あさ・がお

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

日記/記事の投稿

バックナンバー

カテゴリ

キーワードサーチ

▼キーワード検索

お気に入りブログ

幼稚園記念日 New! ありんこbatanさん

ある訪問者 New! 結女★11さん

rainbow(レインボー… rainbow3510さん
百二十五年物語 旅ちゃん5882さん
埋もれ火のアンソロ… コックン4592さん
深夜ぶろぐ便 長七7614さん
ポンちゃんの火曜歌… マダムQさん
イドラ~私的遍歴~ 戸国梨太郎さん

フリーページ

2020年04月12日
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
  

平成の一桁のころ、屋台のおでん屋さんで呑んでいた。

すると、小柄な老婦人が、プラスチックの密閉容器と保温ポットをおやじに預けて、帰っていった。

「おでんはお任せで、お酒はお燗で2合を、」そんなふうな注文だった。

「15分くらいで、」とも。

 

若造な自分が

「家で燗をつければいいのに、」と口をすべらせた。

 

おやじが、鼻で笑ったが、珍しいことではない。

「あちらのご夫婦は、いつも二人できてくれる常連さんだったけど、旦那が体調をくずして外にでるのが難しくなったらしい。こうして買いにきてくれるだけでもありがたいことだ。」

いつになく、おやじがたたみかけてきた。

「このポットだってな。おでんだけじゃ儲けがうすい。酒もあわせて、ちょっとは売上をつけてやろうってことさ。いまどきの家には、こんな安酒より、もっといい酒がおいてあるだろう。」

「この容れ物だってそうさ。ウチに持ち帰りのケースがあるのは知っているのに、わざわざ持ってきてくれるんだ。」

その間も、おやじの目は鍋のうえを行き来し、たびたび小首をかしげる。

お客さんの好き嫌いを思っているのか、煮込みの加減をみているのか。

選び抜いたおでんを鍋の片隅にまとめると、時計に目をやる。

「きっと、飲食店で働いたことのある人なんだろうなぁ。わかってるんだよ。」

もう一度時計をみて、燗をつけはじめる。出したり入れたり、いつにはなく慎重に。

 

「ちょっと、はやすぎたかしら。」

お客が戻ってくると、親父はにこり。

「いえいえ、ちょうどです。」

ひとまとめにしていたおでんを器に移し、手のひらで温度をみてから酒をポットへ。

袋にまとめて、ていねいに割り箸2膳を載せる。

「割り箸は、いいですよ。もったいない。」

 

そのお客さんが去ると、自分の目の前で割り箸を振る。

(どうだ、わかってるだろ)と目が自慢している。

(はいはい)頭をさげて、負けをみとめた。

 






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2020年04月12日 09時27分36秒
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.
X