テーマ:『義経』(332)
カテゴリ:『義経』
物語は、一の谷の坂落としから始まる。だが、この点にまず違和感あり。義経が一躍名を高めた象徴的な合戦であるので、これを冒頭にもってくるというチョイス自体は悪くない。しかも、「新選組!」ではとんと見られなかった合戦シーンのロケであり、一瞬、期待した。ところが、実際に見てみるとさっぱり迫力がない。そもそもこの合戦は、圧倒的に少ない軍勢が遠回りをして一気に敵の背後を突くという壮大ではあるが困難を極める軍略を立てたこと、難所を克服してその着想を勇敢に実行したこと、そして結果的に華々しい戦果を挙げたことで、義経の軍事的天才性を端的に示すものであるが、そうした前提がないままでは、伝説的な「奇襲」の緊迫感が伝わりにくい。そうでない以上、せっかくのロケを活かして映像で魅せてくれるのならばいうことはないのだが、残念ながら映像上もあまり効果が現れていない。逆落しの迫力もいまいちだし、敵兵が慌てふためく描写も中途半端で切迫感が薄く、第一、義経主従の戦いぶりがあまり強そうに見えない。最近NHKの何かの番組で、尾上菊之助(現・菊五郎)が主演した大河「源義経」の一の谷の場面を放送されていたが、それの方が白黒であるのに全然迫力があった。せめて初回視聴者向けに義経主従の顔見せをしたかったかというと、いくら早暁だとはいえ暗くて人の顔がよく見えず、とりわけ彼らの人となりを示す言動があったわけでもなく、人物紹介としての効果も果たしていない(この点、「新選組!」は初回冒頭の架空の事件で各登場人物を端的にキャラクターづけする言動があったのだが・・・と、ついつい比べてしまう)。ここで、ナレーションが入る。この合戦に参陣していた宗盛、知盛、重衡らと義経は一緒に過ごしていたんだよというようなことが語られる。その設定自体は構わないのだが、彼ら三兄弟はこの坂落としには直接関わっていないので、リンクとしては弱い。それをもって時代をさかのぼるきっかけにするのはちょっと強引すぎるような。う~む・・・先行きが不安になってきた。
オープニングも微妙。音楽は総じて美しい。終盤ややまったり気味なのが気になったものの、前半の荘厳な感じなどはスケールの大きさを感じさせる。だが、映像は詰め込み過ぎの感あり。白馬は義経を象徴しているのだろうけど、銀河から飛び出てきたり、突然切り絵風の絵が挿入されるのがよくわからない。いずれ物語が進めば納得できるようになるのだろうか・・・。 本編も全般的に地味で、間延び気味。たしかに清盛が頼朝や牛若らの処刑を思いとどまったという事実は必須だし、そういう決断に至るまでの清盛の心情を押さえることも大事。そして、清盛が実は情に厚く、それゆえ義経との間に葛藤が生まれるというのがこの物語のキモなのだろうとは思う。だが、この一連の描写は必ずしも視聴者が次回以降も見たい!と思わせるような展開にはなっていない。どうせなら、平治の乱の経緯とか義朝の非業の最期をもう少し丁寧に描き、すっかり没落した源氏の無念というものを視聴者に植え付けた方が効果的だったように思う。 いかん、いかん。せっかくの初回なのだから、苦言ばかりでなく、いいところを探そう。 今若に先を歩かせ、乙若の手を引き、牛若を抱く常盤が、雪の中に都を落ちていく。この姿は義経記の描写というか、何かで見た錦絵から飛び出たようで、侘しくも美しい悲劇の始まりを予感させる。幼い子たちの衣装も綺麗。 牛若の屈託のなさがよい。赤ん坊の牛若も実にいいカットを押さえたと思うし、何より五歳になった牛若を演じる神木くんがピカイチ。期待値は高いぞ。 で、予告編が一番面白かったかも(苦笑)。さすがに滝沢君は凛々しいし。まだまだ評価を決めつけるべからず。これからきっと面白くなる(と期待する)。 とりあえず、次回も見ます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 10, 2005 03:43:11 AM
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