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カテゴリ:エッセイ
 有る日のこと、留守番電話に
「あのね、悠子が辞めるらしいの。これから一時間後に送別会の二次会があるみたいなので、連絡ください。」
と、かなり切迫した雰囲気の声が残されていた。

 どうやら、女子三人の同期のなかで唯一会社に残っていた悠子が、突然会社を辞めて故郷に帰ることを知って、もう一人の同期である芳美が慌ててわたしに電話をかけてきたようだった。

 そんなに慌てふためくことでもあるまいに…と送別会も終わってしまった後に暢気に留守電を聞いた私は思ったのだが、一緒に働いていた頃のことを思うにつけ、芳美のまっすぐな態度や、すぐに深刻そうにする癖などが次々に浮かんできて思わず笑ってしまった。それは「三女」の芳美ならではの情に溢れた行動だった。

 「いきなり芳美が現れてびっくりしたよ。おしぼり投げられるんじゃないかって勢いでさ」
 笑しながら語るのは辞めた張本人である。
どうやら、私に電話をしたあとで芳美は悠子の送別会に乗り込んだらしかった。私達は顔を見合わせて大笑いした。平日の昼下がり、仕事を辞めたばかりの悠子を早速捕まえて、夜からの私の仕事の前に「お茶」をしているのである。芳美は転職をして別の会社に勤めているが、職種どころかライフスタイルまでが180度変わった私とは違ってきちんと前職の経験を生かしての転職だ。こんな時間に出てこられるはずもない。ごめんよ、これは大人の時間なんだ…と嘯いて、姉ふたりはそこにいない妹の話で盛り上がる。私たちふたりにとって、芳美は本当に目の離せないかわいい妹だった。

 思えば、歳もちょうど一年ずつずれていた私たちは、ほんとに姉妹みたいだった。

 次女にあたるわたしはポンポンと好きなことを言い、上司にたてついたりしながらサラリーマンにあるまじき量の年休を遠慮なく消化し、もっと好きなことをすると言ってサクサク辞めた。今思えば本当に酷い会社員だった。

 三女は一生懸命仕事を頑張って、その間に人生の酸いも甘いも経験して、新しい人生のスタートを求めて勇気を奮って転職した。一本気で優しく、人に気を遣いすぎるところが玉に瑕だ。

 長女は、ゆったりとしたペースで自分にできることだけをやる人で、祖国である中国関係での仕事を任され、母国語を生かしながら仕事をしてきた。辞める理由は、親の体調がよくないこと、仕事の内容が大きく変わって、潮時だと思ったことだと言う。

 こんなに平日の真昼間から彼女と会っていると、随分昔の思い出が蘇ってくる。
あれはバレンタインデーの時期だった。私が会社で仲良くしていた先輩に行動を起こすかどうか迷っていると、
「迷うなんてらしくないじゃん。だめだったら、あたしが一緒に傷心旅行に出てあげるからいっときなさい。」
と、よくわからない太鼓判を押してくれた。

 さて、バレンタイン当日。自分でもうまくいくと自信満々だったのだが、あろうことかわたしは見事に振られたのだった。
「なんで!?」と怒り心頭に発するのと悲しいのと悔しいのと寂しいのとが入り混じり、セオリー的に泣いてみたりしつつ、気がつくと悠子の家のドアを深夜にもかかわらず叩いて叩いて叩きまくっていた。

 「どーしたのー?」
相変わらずスローテンポで目をこすりながら出てきた悠子は、私を迎え入れて、熱い烏龍茶を淹れてくれた。ぎゃあぎゃあとわけのわからないことを口走っていたわたしの頭をなでてくれて、布団を引いてくれた。私は「明日会社いかないから~!」という一言を残して泣き寝入りした。

 次の朝、11時くらいに起きるとなぜか悠子がいた。
「あれ、会社は?」
「いったよ。年休届け出しに行ってきた。」
どうやら、8時くらいに出社し、やりかけの仕事を片付け、年休届けを出して帰ってきたらしい。
「うそ!?会社行ったのにわざわざ帰ってきたの?」
「だって、約束したじゃーん。さあ、あなたどこ行きたいー?」
にやにやと笑う悠子は本当に私にとって本当に姉のように見えた。

 それから私達は、悠子の車で行列のできるラーメン屋に行きさらに行列を長くして、三浦半島を一周して、時の総理大臣がよく来るという噂の寿司屋のカウンターでマグロをつまみにしこたま飲んだ…といっても、悠子は完全な下戸なので私だけが飲んでいたのだ。話は尽きず、いつまでもこの時間が続けばいいと思うほどに幸せな時間だった。
だれかが自分のためだけに割いてくれる時間ほど贅沢なものはない。悠子はいつだってそうだった。そういう時間を自然につくってくれるから、お姉さんみたいなのだ。

 その悠子が中国に帰ってしまうのは、とても寂しい。
おそらく芳美も同じ思いだったのだろう。居ても立ってもいられなくなって送別会に駆けつけるなんて、まっすぐで他人思いな彼女らしい。わたしたちは二人とも、このおっとりした姉さんに助けられてばっかりだった。狭くなる世界の中で中国なんてほんの隣。日中関係なんかどこ吹く風で、北京の五輪の際には芳美と悠子のところに押しかけようかと、身勝手な次女はひとりプランを立て始める…。




三人姉妹





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最終更新日  2008年05月08日 10時32分00秒
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