カテゴリ:遊女aosmeの「Project」
私はいつも不思議に感じるのですが、製本の道具を手に入れたときに、なぜか独特の喜びがあり、心から嬉しい気持ちになるのです。この嬉しい気持ちをどのように表現したらいいのか分からないのですが、普通の買い物をする喜びとは違う、私にとってなんともいえず、深い喜びなのです。
製本という仕事は、趣味のカテゴリではあまりみかけません。だからあまり製本道具というものがどこに売っているのか、はっきりしないのですね。まだ日本では、製本に携わる人口は非常に少なく、マニアックな分野なのです。日本の伝統的な技術ではなく、西洋の技術なので、日本での歴史が浅いこともあります。もちろん、日本の独自の和とじの本もあります。和紙と墨の文化は、古く大陸から伝わり、日本の地で受け入れられ日本の文化として確立されています。現在は和綴じの本を利用することは日常的には多くないですし、西洋の本が当たり前に私たちの日常にあふれているわけですが、西洋の製本工芸を仕事にし、ましてや趣味にしている人は少ないのです。 ですので、製本の道具はあれだけの商品が網羅されている東急ハンズでも置いてある量が少なく、本格的に制作を始めようとすると、自分で道具を作らないとならないことが多いのです。売っていないものは作らないといけないということですね。はじめはそれが億劫だなと思ったのですが、いざ道具を創り始めると、なぜか夢中になりました。材料を買いに行くところからうきうきするのです。何よりも、その道具が出来たときに、ものすごく嬉しくて、内側から喜びが湧いてくるのです。なんでこんなに嬉しいのか、自分でもよくわからないのですが、とにかく嬉しくて、嬉しくて何度も作られた道具を眺めては喜んでいるのです。伴侶というか、相棒というか、そんな感じでしょうか。道具がこんなに好きだとは自分でも思いがけない発見でした。今日も、皮をすくための、医療用のメスを買ったのですが、シンプルな、ある意味無機質な道具なのに、大変豊かな気持ちになるのです。メスを買って喜ぶというと、ちょとあやしい雰囲気ですが、皆様には、そのようなことはないですか?今までいろいろな趣味で、手作りのための道具を買うことはあったのに、この製本の道具を手にいれたときには特別の喜びがあるんですね。きっといつか、この喜びの意味がわかるときがくるでしょうか。作品を創る時の喜びは当然いつも味わっているわけですが、それとも違う、やはり伴侶を得たというような特別の喜びなんです。道具というものが人間にもたらす感情って、本当に不思議ですね。良い道具は一生の相棒です。なにより頼りになるやつなのです。このような喜びがあること、そういった喜びがあることを知ったこと、まことに人生は奥深いです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.07.19 10:37:05
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