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2009.01.11
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カテゴリ:懐古録

 

 

http://ateliermusique.jp/

 

それでは、スタッフの熱いリクエストにお応えして、

過去に一旦ひっこめたブログを、少しばかり再アップしていきますね…

 

 

~ひどいことをしたもんだ・乗っ取りライヴ~

 

若いということは素晴らしい。

何かをやってみたい衝動にかられた時、

恐れず・迷わず・疑わずの精神で突っ走る事ができる。

それが若さの特権だ。

人間はある程度年齢を重ね、人生経験を積むと保守的になる傾向がある。

何かをやってみたいと思っても、その先に待っている失敗や良くない結果を恐れて、

行動に移さないままやめてしまう事がよくある。

世間を知らないという事は時として大きな武器になる。

大人はとるに足らない雑音に惑わされ、大事なものを見失う。

若者は濁りのない目でそれを見きわめる。

たが、その特権も良し悪しで、裏目に出る事もままある。
 

 

今日は、私のそんなハチャメチャな体験談をお話しよう。

 

それは私がまだ高校1年生の時の話だ。

その頃私は、あるロック・バンドでベーシストとして活動していた。

まだお尻にカラを付けたヒヨッコバンドだ。

にも関わらずその頃の私達は自信過剰で、

自分逹はメチャメチャ上手いバンドだと思い込んでいた。

 

これ、メキメキ上達する初心者が陥りやすい錯覚で、私達はまさにそれであった。

でもこれは一面大事なことで、思い上がりであろうが何であろうが、

その自信はライヴやレコーディングなどでプラスに作用する。

自信を持ってプレイすれば、それは音に反映され聴く人の心を動かす。

たとえ下手でも何かは伝わる。

いい意味での自己陶酔、自分が楽しめなきゃどうするの...ってやつね。

逆にそつなく上手にできても、自信を持っていなければ、人は感動しない。

聴く人はプレイヤーのその心の動きを音を通して鋭く見抜くのだ。

大切なスピリッツはいつまでも持ち続けていたいものだ。
 

 

話を戻そう。

 

その頃、同級生の中に同じくバンドをやっている連中が何人かいた。

少しだけ面識のあったS君が私に歩み寄って来て、

「ムナカタ君、今度俺たちライヴやるから見に来てよ」
 
私はドラマーのMとサイド・ギターのYとの3人で見に行った。

場所はとある市民会館。

様々な催し物の為に広く市民に解放されている場所だ。

中に入るとこれがなかなか広い。キャパ300人といったところか...

私達もこういう所を利用してよくライヴをやったものだ。

 

で、もったいつけていたS君のバンドの演奏がやっと始まった。

オープニングはクリームの「サンシャイン・ラブ」

...イントロが鳴ったとたんにズッコケた。

M・「...なんだありゃ?、...寝てるのか?」

私・「......?」

Y・(絶句)

M・「あいつ、バスドラムを全然踏んでないよ」

私・「いかにも」

Y・(笑)

 

S君には悪いが、チューニングもボロボロで、

それはもう演奏の体を成していなかった...

場内には寒~い空気が充満...

私達3人は、それでもしばらく我慢して聴いていた。

 

...が、最初にシビレを切らしたのが、ドラムのMだった。

曲と曲の合間にズケズケとステージに近づいて行き、

S君バンドのメンバーに向かって何やら言い始めた。

このMという男、とんでもない破天荒な奴で、突然何を言い出すか、

何をやらかすかわからないのだ。

ステージからまた客席に戻ってきたMは私に耳を疑うような事を言った。

「ムナカタ、お前あいつと知り合いなんだろ?

じゃあ俺たちと演奏を代わるようにお前から言ってくれ。

こんな演奏、聴いていられるか、だいたい金を払った客に失礼じゃないか!」

 

この男はそんな交渉をしていたのだ。

 

何を言い出すのかと思いながらも、それもそうだな...と私も同感した。

言い出したら聞かないMである。ムードはだんだんそっちに傾いていく。

ギターのYも賛成。決まりだ。
 

でも、ここでひとつ問題があった。私達のバンドメンバーは今ここに3人しか居ない。

リーダーでリード・ギターのKが居ないじゃないか。

Kは私よりひとつ年上で、彼の友人のOと一緒に何も弾けない私に

ベースとギターを最初に教えてくれた先輩である。

 

私・「...どうする?、Kを呼ぶか?間に合うか?...」

Mが公衆電話に走る。

M・「来る、来る!、Kが来てくれるぞー!」

会場では相変わらずひどい演奏が続いていた。

私達3人はグッと我慢してKの到着を今か今かと待った。
 

 

しばらくしてKが到着。

ステージ上の演奏を聴くや否や、「こりゃひどいなぁ...」

さあ、再び交渉だ。

曲の合間を見て、今度は全員でステージに歩み寄る。

M・「さっきの話だけど、ちょっと代わってよ」

私・「1曲でいいからさ、ね、頼むわ」

S君も嫌そうな顔をしながらも、「...じゃあ、ちょっとだけなら...」

 

ラッキー!

 

S君のバンドメンバーはしぶしぶ舞台のソデへ...

私達はすかさずステージに上がり、楽器を手にして円陣を組んで相談。

K・「よし、あれをやろう」

全員・「OK!」

 

Mのカウントと共に得意のロックン・ロール・ナンバーが炸裂!

会場の空気は一変した。

曲が終わると同時に、割れんばかりの拍手が...

バカウケである。

こうなりゃ1曲ではやめられない。続けて2曲、3曲とやった...

 

突然、ドラム以外の音が全部消えた...

真っ暗な場内には観客のざわめきが...

そして、S君バンドの冷たい視線...

そう...S君が全ての電源を切ってしまったのだ。

「失礼しました!」と、私達はステージを降りた。

 

~でも、このスリル感はたまらなかった~

 

そしてまた客席に戻った私達は、彼らのライヴの続きを見た。

エンディングはディープ・パープルの「ブラック・ナイト」だった。

真っ昼間だというのに、

「サンキュー・グッドナイト!」と言ってライヴを締めていた...

 

翌日、学校の廊下でS君とすれ違った。

挨拶をしたが無視されたのは言うまでもない。

若かったとはいえ、今思えばホントにひどい事をしたものだ...

もし、逆の立場だったら...

 

S君には、改めてお詫び申しあげたい。
 
ごめんなさい。

 






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Last updated  2009.01.11 20:59:07
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