http://ateliermusique.jp/demo.html
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久しぶりに新デモ曲を公開しました。
曲といっても今回は楽曲ではなく、ギター1本の作品です。
MASAAKIがドラムのソロであったように、
これもバックの演奏を付けないピンのソロにしました。
タイトルは「クラッシュ2」
聴く人が聴けば、すぐに解ります...
そう、エディのあれをちょっとパロっています。
この曲にまつわるエピソードを少し...
5年ほど前の話ですが、
ギターの本格的な打ち込み法をまだ知らなかった頃、
シーケンサーそのものの操作習得にも行き詰まっていました。
マニュアルだけでは、ソフトウェアを完全攻略できなかったんです。
それもそのはず。当時の薄っぺらいマニュアルや攻略本などに、
私が知りたい事がすべて記載されているはずもなかった訳ですから...
そこで、この先はその道のプロに教わった方が早いという結論に達し、
とある教室に行きました。
対応してくれたのは、若い女性講師でした。
何か用意していたものがあったのか...
話を始めた時、私はそれを遮って言いました。
「知りたい事を質問しますから、それに答えてください」
その時の私には、喉から手が出るほど知りたい事が幾つもあったので、
それが何よりも優先された訳です。
私は、矢継ぎ早に質問しました。
でもそこはさすがにプロ。
操作系のどんな質問にもちゃんと答えてくれました。
当時の私は、ギターは打ち込みでは表現不可能と思っていました。
世に出回っているそれ風の音ネタを聴いても、
理想とは程遠いものだったし、
それがMIDIの限界だと思い込んでいたんです。
だから、それまでに作った曲にもギターのデータは殆どありませんでした。
ところがある時、ひとつの音源が耳にとまりました。
そのデータには、リアルなギタープログラムがなされていました。
「あれ...これは一体どうやっているんだろう?...」
早速そのネタを持って行き、女性講師に質問しました。
「これはどうやって作っているんですか?」
「これは...ピッチベンドを使っているんですよ」
「何ですか?それは...」
女性講師は、
それが何なのかをサラッとデモンストレーションしながら説明してくれました。
私はそれを見た時、身体中に電流が走るような思いをしました。
そして確信したんです。「これで自分の世界が表現ができる...」と。
私の脳裏にはその瞬間、現在の自分の姿がハッキリと映りました。
それからというもの、ひたすらにギターの打ち込みを実験し続けました。
と同時に、ギター楽曲を一気に数曲書き上げたことを覚えています。
ともあれ、ギター打ち込みに関して女性講師から教わったことはただひとつ、
「ピッチベンドの存在」だけだったのですが、
それが私の音楽人生を大きく変えるきっかけになったことは
紛れもない事実です。
女性講師のレッスンは、
3~4回受けた段階で大筋の疑問は解けたので終了し、
その後はMIDIの仕組み等を習得すべく別の教育も受けましたが、
私独自のギタープログラムは延々と続いていたのです。
私がギタープログラムを始めた当初、
一気に作り上げた数曲の中に「クラッシュ 」という曲がありました。
確か、処女作だったと思います...
溢れんばかりのアイデアをシーケンサーにぶつけていったのを
昨日の事のように覚えています。
コンセプトはエディの「暗闇の爆撃」のように...と決めて作りました。
今聴くとちょっと恥ずかしいですが、その時は興奮しましたね...
そのコンセプトをそのままに、
0から作り直したものがこの「クラッシュ2」です。
これを制作するにあたって苦心した事は、
「間」、「揺れ」、「空気」、「ノイズ」の4つです。
私がイメージするギタリストのライヴプレイを
できるだけリアルに表現する為には、この4つがとても重要でした。
ほんの少しでも間の取り方を誤ると「間抜け」な演奏になり、
揺れがなければグルーヴはしない...
空気の欠如は「臨場感」を損ね、
ノイズの無きはリアリズムを欠く...
そこにハマらないように、今の自分の持てる能力を結集しました。
しかし...表現したい奏法によっては、
どう頑張ってもうまくいかないものもあり、
音源の限界を感じているのが正直なところです。
私が満足できるプログラムに至るには、
テクノロジーの更なる進歩が待たれます。
バックの演奏でごまかせない、丸裸のギター...
さあ、皆さんにはどのように聴こえるのでしょうか...
あれから約5年... 今、原点に回帰する意味も含めてこの曲を作り、
登って来た階段をここで振り返ることにしました。
私がDTMを始めたきっかけは、
バンドのメンバーに渡すデモ作りの目的でしたが、
「これを仕事にしよう」と決めたその時から、
私の中で新たな音楽への挑戦が始まりました。
私が、ギターやその他の楽器のMIDIプログラムにこれ程こだわるのは、
楽器が弾けなくてもイメージと情熱があれば、誰でも音楽を創れるという事を、
ひとりでも多くの人に知ってもらいたいからです。
それを伝える事が自らの使命と確信し、
邁進し続ける決意は微動だにしません。
5年前の私が見通していたものは、
本当は現在の自分ではなく、まだそのもっと先にある...
命の炎が燃え尽きる寸前の自分なのです。
目指しても果てのない地平線のように、人生には辿り着くゴールはない...
前進の歩みが止まるその地点にあるものは、断崖の絶壁...
そこは人生の終わりを意味すると同時に、
成すべき事の最高到達点でなくてはならない。
私はその時からずっと、その瞬間に居る自分を追い続けているんです...