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2009.10.10
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私達はDTMを教える仕事を通じて、

何を伝える事がいちばん大切なのかをいつも考えている。 
方法論を教えることは当然としても、最も大切なものは何なのか...  
 
聖域に直接ふれることは出来なくても、
それに対してより良い方向を指し示して導くことは可能であると考える。  
それは一見漠然としているように見えて、
実は最も確実で大切な指導法だと信じている。   
 
今こうしてこの記事を書いていると、
我が恩師・山田勲生がいかに器の大きな
卓越した指導者であったかという事を改めて思う。  
 
山田は、常識外れの型破りな講師だった。 
レッスンには技術論や方法論などは皆無であった。 
「そんな事は自分でやれ」と云わんばかりに...  
 
山田はスクール側からいくら勧告を受けても、
頑としてそのスタイルを変えようとはしなかった。  
「ここを教室と思うな、ステージだと思え」 
 
さわれない聖域にまともにメスを入れたのだ。  
 
技術は後からでもどうにでもなる。 
今ここでいちばん大切なのは、
互いの駆け引きの中から相手の息づかいやエナジーを感じ取り、
隙のない「ライヴ」の呼吸を身体に叩き込む事だ...と。  
 
山田は私と同じ目線にまで降りて来て、
心行くまで相手役をつとめてくれた。  
一段高い所からふんぞり返って「はい、ココはこう...」
などと言うつまらない講師とは訳が違った。  
 
山田は、何年か後にその人の本当に役に立つ
「血や肉」の形成に渾身のエネルギーを注いだ。  
 
ありがたいことである。 
こんなに素晴らしいプレイヤーと、
同じ空間で思う存分に音が出せるなんて...  
 
ただ、いくら送信機が優れていても、
受信機の性能が悪ければエナジーの伝達はうまくいかない。 
受け手にもそれなりのスキルが要求されて当然だ。  
 
残念だが、山田の真意が汲み取れずに、
何もつかまないまま去って行った教え子は多かった。  
 
今振り返ってみても、山田勲生という男は本当に凄い人物だと思う。 
私が山田に付いていた頃、彼はまだ20代半ばの若々しい青年だった。 
私は今49歳。 当時の山田の倍を生きている。 
然るに、今の私をもってしても当時の山田の足元にも及ばない。 
「師」とは、永遠に越えられない存在... 
それが私にとってこの上のない誇りであり、喜びでもある。  
 
私が山田から学んだものは、「自分自身の発掘」に他ならなかった。 
今こうして内なる創造の世界を自由に駆け巡ることができるのも、
山田との出逢いがあったればこそ。  
 
独学で自らを鍛えた私の3年間の礎の上に、
見事な大輪を咲かせてくれたのが、恩師・山田勲生、その人である。   
 
音楽とは、本来は人から教わるものではない。 
人を介して感じ取るものである。 
技術論や方法論は確かに習うことができるし、
それはそれで価値のあることだ。 
 
しかし、いくらそこを突き詰めても、最も大切な「核心」には至らない。  
本当の答えに辿り着くには、
自分自身を内面から変革していく以外にはないのだ。   
 
私がこの連載記事を通して本当に伝えたかったことは、
実はギターのMIDIプログラムのノウハウではなく、
理屈や方法論だけに凝り固まることがいかに愚かであるか...
という処にあった。  
 
何も知らないアホウの戯言にならないように、
あえて理詰めで論破した上で、
私の云わんとする事に逆説的に説得力を持たせようとしたのだ。  
 
もし、この連載で何かを学び取ってくれた人がいたとしたら、
覚えていてほしい。 
人は、とかく安全策をとりたがる。 
精神的プレッシャーがかからない事には、労力を惜しまない。 
しかし、どこにも逃げられない窮地に立たされた時、
目の前にいくら凄いご褒美があっても一目散に逃げ出す。 
 
世の常である。 
そこから逃げない人だけが別世界を見ることができる。
これは、いろんな意味を含んでいるので、よく考えてほしい。  
 
ともあれ、私が長々と話してきた事は単なる手段であって、
目的ではない。 
それをコントロールする頭脳が眠っていたら何の役にも立たない
タダの無駄知識である。   
 
本当の答えは何処にある...  
 
核心に触れようとすると火傷をする... 
それは、燃え盛る太陽のように、
強い逆光線を放っていて
直視できない程まぶしいものなのかも知れない... 
 





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Last updated  2009.10.10 22:45:01
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