小さなケーキを武器にして
話す時、君がひどく自分の顔に触れるのは、そこに居ることを、無表情なくせして必死に探して探して焦がれていたからだと思う。今なら、そう思う。人間は自分の肌に触ることを本能的に求める生き物なのだとどこかで読んだ。必死に自分の中のものを言葉にして外に吐き出そうとすると、言葉と一緒に境界がするする、するする、と、解けていくみたいな気がして、必死に自分に触れてる自分がいる。耳の後ろとか、今日もピアスを嵌め忘れたピアスホールとか、何故か急にカサカサになった左の小鼻とか。なんとか平静を保とうと、表情はひどく冷めているのに、身体は解けていく境界を手繰り寄せるのに必死になってる。こんなにも、言葉を吐くというのは自分の存在を危うくするのか。身体と世界の境界は、まるで水のリボンみたいだ。掴んで感触はあるのに、手繰り寄せられそうな気がしているのに、逃げてゆく。あぁ、でも、そんな本能があるならば、まだ人間は、個体でいられそうで、安心した。パルメザンチーズの黒コショウチーズケーキバーです。