始まりの時~10~
麗奈が手術室から出てきたのは、俺が病院に着いたのと同時だった「手術は成功しました。幸いにも、傷は急所を外れていたので、命に別状はありません」医者が微笑んだ俺はというと、ほっとして、思わず椅子に座り込んでいた「翔お兄ちゃん・・・疲れてるんだから家でゆっくり休んできてよ」美奈に言われる。そうは言ってもな・・・「お姉ちゃんなら大丈夫だから」「そうそう、しっかり休めよ~」「・・・吹っ飛ばされたお前が言うな」「見られてたか」「どっちにしても、休息は必要。早く休んだ方がいい」そう言った尊に追い返され(政幸もだが)家に帰り、布団に潜り込むと、疲れのせいか、すぐに眠りに落ちた翌日、麗奈の居る病室に行くと、美奈が眠たそうに目をこすりながら出迎えた「美奈・・・もしかして寝てないのか?」「うん・・・なんだか心配で眠れなくて」しかたもないか。美奈にとって麗奈はただ一人の家族だしなそれにしても随分と眠そうだな「少し横になった方がいいと思うぞ?つらそうだし」「うん、そうする」美奈が麗奈の隣の仮眠用のベットで横になる。すぐに寝息が聞こえてきた麗奈はというと、ベットの上で、静かに眠っていたその寝顔を見たとき、はっきりと自分の気持ちに気がついた「麗奈・・・俺にはお前が必要みたいだ」「お前を失いかけた時、はっきりと分かったんだ」「俺にとって・・・大切な人なんだということを」そう・・・それは恋であり、愛「俺のせいで傷つく破目にさせたのに、こう言うのもなんだが・・・」「守り続けるよ・・・ずっと」「うん・・・頼りにしてる」・・・え~と「どこから聞いてた?」「私の名前を呼んだところから」全部かよ・・・うわぁ、恥ずかしすぎるぞ、おい「顔、赤い」そりゃ当然だろ・・・「それよりも・・・迷惑じゃないか?」「何が?」「・・・守るってこと」「迷惑じゃないよ・・・だって翔のこと好きだもん」麗奈が赤い顔ではにかみながら言った「ね・・・翔は?」「・・・好きじゃなかったら、あんなこと言えるかよ」「よかった」俺たちは、しばらく見詰め合っていたそして、どちらともなく、顔が近づいていったこの世にまた1つ、小さな幸せが生まれた