カテゴリ:カテゴリ未分類
うむ、貴君か。 他でもない。 例の溺死した冒険者のことで、イレインどのが話があるそうだ。 その冒険者とイレインどのは親しくしていたようなのでな、 なにか手がかりがあるのかもしれん。 貴君、行ってきてはくれるようお願いする。 そして、できればなぐさめてやってくれ。 あ、こんにちは……。 アルフレッドさんから聞いたのですね。 実は、これが……、 これが、昨日届いたあの方からの手紙です。 まだこの街の連中はだれもきづいていないだろうが、 クロノス城に危機がせまっている。 危機を未然にふせぐには、 さすがの俺といえども手にあまるくらい、 かなり大きくてやばいヤマだ。 だから俺は、最後の最後、 どんでんがえしのための『カギ』を探ることにした。 まだ俺の正体はやつらにバレてはないが、 山のてっぺんを目指せばそれだけ目立つことになる。 最後までバレずに探りとおす自信はないが、 俺には切り札がある。 最悪のときにこそ発揮される切り札が。 俺にもしものことがあれば、 アルフレッドのだんなに伝えてほしい。 俺の身の回りをよく調べてくれ。 問いの答えが横糸、 数字が縦糸。 織りなすところに真実がある。 ……実のところ、あんたに昔もらった手織りの手巾がヒントになった。 いろいろと世話になったこと、礼をいう。 はやくあんたが望んだように、 世界中を歩きまわれる世の中になればいいと思っている。 どうか長生きしてくれ。 ぶっきらぼうだったけれど、 よくわたしに色んな土地の話を聞かせてくれた、 やさしい人でした。 命をかけてなんて、誰もよろこびはしないのに……。 ほんとうに、もう、いないのですね……。 ……ああ、あいつなら覚えている。 狷介というのか、どうにもひねくれている人間だったが、 悪い人間ではなかった。 5日前にここにきたときに、 3日後に出してくれといって手紙をあずけていった。 ……もちろんそのとおりにしたさ。 最後に来たのは一昨日だな。 興奮した様子で急いでやってきた割に、 慎重に数えながらクロを引き出していった。 「たとえ野原に倒れ臥しても、これでやつらを出し抜ける。 やれるものならやってみやがれ。 こんな仕掛けを用意してるなんて、神様といえど気がつくまいよ」 などとつぶやいた後、 アルフレッドのところへ行ってくると言い残して街に消えた。 ……その後は知らん。 ふう……この倉庫も、もう使われることはないのだな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|