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カテゴリ:産婦人科医療
先日大学病院で癒着胎盤についてディスカッションする機会があった。
癒着胎盤か否かの正確な術前診断が可能かどうかであるが、今のところやはり不可能である。 超音波やMRI検査でいくつかの診断基準の試みがあるが、どれもoverdiagnosis(癒着胎盤でないものを癒着胎盤と診断してしまう)になる傾向があることはよく知られている。 だから術前に癒着胎盤を疑ってはいても安易に子宮を摘出することなく、実際に術中に胎盤を剥がしてみて剥離ができたら極力子宮を温存する。剥離困難であれば癒着胎盤と診断しその時点で子宮摘出に踏み切るというのが現在のところの一般的な対応である。 しかし本当に癒着胎盤であれば剥離を試みる操作自体が多量の出血を招く。時にはこの出血が致命的となる。そして救命できなければ逮捕となる恐怖が福島県立大野病院事件以来産婦人科医の頭から離れなくなっている。 もし術前検査のみで癒着胎盤と決めてしまい、胎盤の剥離を試みることなく子宮摘出を行えばその方が出血が少なくて済むかもしれない。しかしその考え方によって摘出された場合、何割かは摘出の必要が無い子宮までとってしまうことになる。 「患者のために迷って四苦八苦した上に逮捕されたのではかなわない」という思いから、このような摘出が増加している可能性は高い。これも福島県立大野病院事件での誤った逮捕ゆえである。検察はこんなことを考えたことすら無いかもしれない。しかしその罪がいかに大きかったかをあらためて感じた。 けど検察はなんのお咎めも無しか・・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.10.06 09:43:36
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