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東京医大で医局員が学位取得の際に教授が謝礼金を受け取っていたことが報道されているます。↓
http://www.asahi.com/national/update/0203/TKY200902030388.html これまでにも名古屋市大、横浜市大で同様の謝礼金授受があったとして報道されていました。 おそらく名古屋市大の報道以前に学位を取得した日本全国の医師の9割以上が、学位審査を受け持った教授(主査1人副査2人)に謝礼金を渡していたと思います。 名古屋市大は審査の際の口頭試問の内容を事前に教えるなど、これはやはり収賄の要件を満たしていたと思われますが、ほとんどの大学では学位授与の後にお礼と称して金銭を渡していたので、問題が無いという思いで習慣化していたのでしょう。 こういう報道を一般の人が読むと、「札束を手にしてウハウハ状態の強欲医学部教授とこびへつらう医局員」といったステレオタイプのイメージを思い浮かべると思います。まあ、それでもええんやけど、実態はもうちょっとちがいますね。 謝礼金を差し出す方も受け取る方も決して積極的では無いのに、どちら側にもやめる勇気が無かったというのが実際のところで、いかにも日本人的な習慣だと思います。 私が学位を取得したのは15年ほど前です。大した内容ではありませんでしたが、3年間研究の後論文にして学位審査を経て取得したものです。1日の診療が終わった後に疲れた体で試験管を振ります。夜中の2時頃ようやく実験を終えて帰宅という毎日です。同時期に取得した他のドクター達もそうでした。だから決してお金で学位を買ったつもりはありませんが、学位授与後の謝礼金の習慣は隠然として昔からありました。 教授側からの要求など無いし、もちろん我々もよろこんで差し出す気持ちなどありません。しかし先輩のドクターから当然の如く謝礼金の申し送りがあります。「金額は主査が20万で副査がそれぞれ5万やからな。自分だけええ子になろうと思ってようけ渡したらあかんぞ。こういうもんはいったん金額が上がると、それにつづく者は値下げするわけにいかんのやからな。後輩のためにもこの金額は守っとけ。」という具体的な指示がありました。 私なんぞは大学の医局の雰囲気(いわゆる老舗の医大にありがちな権威主義的な雰囲気)がイヤでしょうがなかったんで、さっさと市中病院で臨床に専念したいと思っていましたから、30万で縁が切れるならまあいいかなどと思っていました。そういった連中の間では謝礼金のことを「手切れ金」と称していましたね。30万は安くはないですが、払える金額なんですよ。 主査のE教授は、謝礼金は当然のこととして受け取っていました。「まあ、慣れたもんやなー」という感じでした。 副査の1人であるS教授は最初から「一切謝礼金の類は受け取らない。絶対持ってこないように」と公言されていました。先に挨拶に行ったドクターからも、「S教授は絶対受け取らへんから、もう最初から出さんほうがええよ。ほんまに挨拶だけでええわ」と聞いていましたので私もお礼の挨拶のみにしました。聞くところによると自宅に謝礼金を送りつけたやつもいたのですが、送り返してきたそうです。 もう1人の副査のN教授に関しては面白いエピソードがあります。教授室に謝礼金を持って挨拶に行くときは原則1人ずつ入っていくのですが、私は気心の知れたT先生と2人で入って行きました。「向こうも1人ずつ対応すんの大変やろうからいっしょに行くか」ってノリでした。我々の前に入って謝礼金を渡したK先生から「N教授、差し出したら普通に受け取るから」という情報を得ていましたのでさっさと渡して帰ろうという気持ちで入ったのですが・・・ こういうとき物怖じしない性格のT先生がまず口を開いて、「先生、お世話になりありがとうございました。これ、ほんの気持ちですが受け取って下さい。」と謝礼金の入ったのし袋をおじぎしながらN教授に差し出したところ、「いやいや、こんなものは受け取れないよー」と軽く遠慮を示します。 この後は「いえいえ気持ちですから」「いやー、それは困るなー」「いえそう言わずに」ぐらいのやり取りの後に受け取るのが目に見えるんですが、T先生予想外の反応をします。 「あ、そうですか。失礼しました。」とあっさりのし袋を引っ込めてしまったんですよ。私も教授も一瞬ポカンとして、3秒ほどの沈黙がありましたが、「うん、そんなもの受け取るわけにはいかんよ。ははは・・」と明らかに困惑した顔で答えるN教授。 「げっ!わし、どうしたらええんや?お金差し出すわけにいかんなこれは」と心の中で即断し、「先生、私もお世話になりました。ありがとうございました。」と言葉を述べるにとどまりました。 「うんうん、おつかれさん」とまだ明らかに顔に困惑の色を残したままのN教授。 「では、これで失礼します」と立ち去ろうとしたときに、「あのーこれ、さっきK先生が持ってきたんだけどねー」と机の引き出しから謝礼金の入ったのし袋を取り出して、「K先生のだけ受け取るわけにはいかないからなー。これ、悪いけど君たちK先生に返してきてくれる?」とどことなくバツが悪そうに我々にのし袋を託します。 私は予想外の展開に頭が適応できないままでしたが、T先生は落ち着いて「わかりました。渡しておきます。」とのし袋を受け取ります。 我々はその足で医局の控室にいるK先生のところに急ぎ、「おー、よかった。まだ居てたんやな。先生のカネ取り返してきたぞー。」とのし袋を渡しました。驚いたK先生にことの顛末を話したところで3人とも大笑いとなりました。 「わー、ラッキーや。T先生ありがとう。」とK先生は大喜び。 まあ、こんな感じでした。 悪しき風習であることは間違い無いですし、報道のおかげでこんなアホらしいお金のやり取りがこれからは無くなるでしょう。 しかしS教授のように自らを律する教授がもっといてもよかったはずです。マスコミが報道していなかったら延々と続いていたでしょうね。やめれなかった我々にも当然問題があったわけですが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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