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2009.03.31
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カテゴリ:産婦人科医療
医師の勤務と労基法の関係をネットで調べていたら、不勉強なことだったが平成14年に厚労省から「医療機関における休日及び夜間勤務の適正化について」という通達が全国の都道府県に出されている。おそらくうちの病院にもなんらかの形で通達がきていたのかもしれないが、気にもしていなかった。


法律用語というか法規の文章というのはどうにめ馴染めないが、どうやらこういうことらしい。
我々は当直の日にはその日の朝8時から翌日の夜までのおよそ36時間連続した勤務であり、夜間に救急あり出産あり緊急手術ありで睡眠がほとんど取れないことも稀では無い。このような勤務が若い医師だと月に7~8回、我々のような50才の医師でも月に5回程度はこなさないと仕事が回らないのが現実である。
このような勤務は労基法違反にあたるらしいが、今まで表立ってお咎めがあまり無かったのは、我々の夜間、休日の宿日直の規定が以下のものであるという前提に立つためらしい。


(以下厚労省の通達から抜粋)

医師の宿日直勤務とはほとんど労働する必要がない勤務のみを認めるものであり、病室の定時巡回、少数の要注意患者の検脈、検温等の特殊な措置を要しない軽度の、又は短時間の業務を行うことを目的とするものに限る。したがって、原則として、通常の労働の継続は認められないが、救急医療等を行うことが稀にあっても、一般的にみて睡眠が充分とりうるものであれば差し支えない。
宿直勤務については、相当の睡眠設備を設置しなければならない。また、夜間に充分な睡眠時間が確保されなければならない。
宿直勤務は、週1回、日直勤務は月1回を限度とすること。



こんな文章を読むと思わず吹き出してしまう医師が多いのではないだろうか。
要するにほとんで寝ていられるような勤務だから時間外勤務としては扱わなくてよい。
だから翌朝から通常勤務を続けても差し支えないということで労基法をクリアしているという建前らしい。


以下のような勧告も書かれている。

宿日直勤務中に救急患者の対応等が頻繁に行われ、夜間に充分な睡眠時間が確保できないなど常態として昼間と同様の勤務に従事することとなる場合には、宿日直勤務で対応することはできません。したがって、現在、宿日直勤務の許可を受けている場合には、その許可が取り消されることになりますので、交代制を導入するなど業務執行体制を見直す必要があります。

つまり夜中も昼間と同様に働かなければならないような場合は、当直明けは休みとなるような交代制を取れということである。

現実はどうか?・・・午前中外来、午後手術、夜間出産、救急、朝からまた外来、手術・・・という勤務が常態的に行われている病院がほとんどだろう。

夜間働いたら翌日は休むのが当然である。人間の集中力はそんなに長く続かない。そんなことは厚労省から言われずとも昔からわかっている。しかしそれが実現できる医師数もなければ人件費を出す経済的余裕が病院には無いのである。奇しくも全国で赤字に転落する病院が増加していることが報道されている。↓
http://sankei.jp.msn.com/life/body/081031/bdy0810310002000-n1.htm

例えばうちの病院の産婦人科常勤医は5人だが、夜間当直明けは休むという決まりにすると、日勤帯の医師数は必然的に4人になる。それでは外来業務や手術をこなすことは不可能になる。それがわかっているから医師も無理を承知で今のような勤務に甘んじているのである。患者を制限してベッド数も縮小すれば人は回るだろうが、病院が赤字になることは目に見えている。ますます出産する病院は減少する。

結局お上というのは口は出すけどカネは出さない。
本来なら厚労省の通達は我々にとって福音となるべきものだが、通達を遵守するための後ろ盾が何も無いのである。





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Last updated  2016.10.06 09:41:56
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