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2011.06.06
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カテゴリ:産婦人科医療
緊急避妊薬が日本でもようやく認可され、先日から販売されている。といっても薬局の店頭で自由に買えるわけでは無く、医師の処方が必要で産婦人科医のいる医療機関を受診しないと手に入れることができない。

実は日本では以前から緊急避妊薬として、中用量ピル(少しホルモン含量の多い、古いタイプのピル。日本ではピルとして認可されていなくて、月経不順などに使用する治療薬としてのみ認可されている)を性交後直ちに内服することで代用してきた。こちらは薬の値段としては1000円もしないので、どこの病院も3千円から5千円程度で処方していたようだ。
中用量ピルの流用は緊急避妊としては効果が不安定で、安全性も無視できない。国の怠慢のためにこのような方法を強いられてきたのである。その意味では今回の認可は朗報といえる。

今回発売された緊急避妊薬は、性交後72時間以内に内服すれば8割以上の妊娠阻止率が望めるという。中用量ピルによる緊急避妊の妊娠阻止率50~60%に比べて格段に効果があり、しかも体への負担が少ない。
まあ、欧米では何年も前から発売されていて、しかも薬局で自由に買えるいわゆるOTC(Over The Counterカウンター越しに買えるという意味)薬剤となっている。

緊急避妊薬をOTCとしていいかどうかは議論のあるところだろうが、それにしても驚くのはその価格。なんと1回分(2錠)で1万円という価格設定がなされている。これは医療機関への納入価格だから、実際に患者が病院で支払う金額は1万3千~1万5千円程度になるだろう。これは諸外国と比べて破格の高値である。

病院に行かなければ手に入れることが出来ない、しかも高価格。かなり敷居の高い薬にされてしまっている。これらは全て厚労省が決めることなので、我々には如何ともし難いが、もう少し何とかならなかったのだろうか?

緊急避妊薬の製造原価はかなり安いはずだ。日本で自社開発されたものでは無いし、外国で何年もの使用経験があるので巨費がかかる大がかりな治験も不要だろう。
ということは、この極めて高い価格は、薬事行政側が敢えて敷居を高くする目的で設定したものと考えざるを得ない。その背後には、「こんな薬を気軽に入手できるようになったら、性のモラルが乱れるのじゃないか」といった思惑があるのだろう。しかしこれは余計なお世話であって、ある意味女性を蔑視した考えとすら思える。

緊急避妊薬の最大のメリットは人工妊娠中絶を減らせられるところにある。中絶が女性の体に与えるリスクに比べれば、薬のリスクなどほとんど無いに等しい。何よりも、生命を握りつぶす中絶行為が回避できることは女性にとっても我々にとっても救いである。
人工妊娠中絶に対する罪の意識が希薄な日本では、この最大のメリットがあまり考慮されていないように思える。
これは低用量ピルが認可される過程においても同様だった。諸外国よりも認可が何十年も遅れた理由の1つは、行政側も国民も中絶に対する罪意識が希薄だったからだ。

ところで、ネットでは何年も前から輸入品の緊急避妊薬の通販が普通に行われている。今回ようやく日本で認可された薬と全く同じ成分のものが3千円程度で売られている。法律的にはあくまでも個人輸入を手助けするという立場で販売しているため、薬事法には抵触しないらしい。
今回のような極めて高い価格設定は、おそらくネット販売をさらに促す結果になるだろう。ただし、玉石混淆のネット販売で、薬剤の安全性が担保されるかどうかはわからない。
国としての今回の認可が、緊急避妊を敷居の高いものとしてしまい、その結果女性の健康が害されるとしたらこれほど本末転倒な話も無いだろう。





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Last updated  2016.09.30 15:59:27
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