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カテゴリ:突発性難聴体験記
突発性難聴で完全に回復された方はいいが、難聴が残ってしまった場合につらいのが耳鳴りと聴覚補充現象で、私自身この2つに悩まされていることはすでに書いた。
特に今回の耳鳴りは比較的低音で、「ブーン」といった感じで鳴っている。ものすごく耳詰まり感を助長する音で、うっとうしいことこの上ない。「勝手に鳴ってろ」式に相手にしないようにはしているのだが、まだ脳は「危険信号」と勘違いしているらしく、どうしても意識に昇ってくる。 聴覚補充現象は調子のいい日と悪い日でだいぶちがう。 先日仕事からの帰り道、時代遅れのマフラーを外してシャコタンした車が猛烈にエンジンを吹かして通り過ぎていった。あまりの響き具合に頭の中が一瞬真っ白になった。「何考えとんねん、ボケ!」と怒鳴りたかったが、とうに過ぎ去った後だった。 何をするのも手荒く作業する人がいる。普段は気にしたことも無いが、例えばお店でものを片付けている店員さんが、作業が荒くていちいち大きい物音をたてたりするとそれが耳に響いて、店を出たくなる。 先日久しぶりに回転寿司屋に行ったけど、「ヘーイ、いらっしゃーい!!」と大声で叫ばれるだけでもうアウト。そして普段気にしたことも無かった店内のざわつきが「グォー」という地響きのような音をたてて耳の中で暴れる。体全体が宙に浮いたような不安定な感じになる。 聴力が固定してしまった以上、この2つのやっかいな症状は一生つきまとうのだろうか? これについて調べた論文がAudiology Japanという雑誌に載っている。耳鼻科の先生方の間でどれほど読まれているのかはわからないが、もしご存じ無いのであれば難聴が残ってしまった患者さんの説明に是非とも参考にしてほしい。 著者の一人である新田清一氏は耳鳴りの治療で有名。というか耳鳴りの治療に取り組んでおられる耳鼻科の先生は圧倒的に少ないのである。突発性難聴もオージオグラムが変動しなくなったらそれで終わりという耳鼻科医がほとんどだ。中には「耳鳴りは耳鼻科の領分じゃありません。心療内科に行って下さい。」と平然という耳鼻科医もいるらしい。 さてこの論文では15例の患者を対象に、耳鳴りと聴覚過敏という突発性難聴の後遺症とも言うべき不快な症状が、最終的にどうなっていくかを追跡している。 いろいろと専門用語も出てくるので、ごくザックリと説明すると、突発性難聴発症後6ヶ月経つと、ほぼ全症例でこれらの不快な症状が苦痛では無くなっていたという結論である。 耳鳴りに関してはおそらく前にも書いたhabituationに至ったということだろう。 聴覚補充現象についても、単に馴れるのかその現象自体が収まってくるのかはハッキリ書かれてはいないが、いずれにせよ苦痛で無くなれば治ったのと同じ事だ。 6ヶ月は長いようにも思えるが、一生苦痛から逃れられないのではないかと不安に陥っている患者からすればこの上無く朗報である。苦痛から解放される日が来ると思えば6ヶ月ぐらい耐えられる。例数が15例しかないので、100%とは言えないにしても「そのうちよくなるんだ」という希望の裏付けには充分なるだろう。 それにしてもこの論文、2013年発表である。ということは患者にとってこんな大事なことが今まで調べられてこなかったということだ。 聴力固定したらハイ終わりでは無くて、こういった長い目でのフォローアップがもっと必要なのではないだろうか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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